■公共マナー

阪急電車。
今は東京に住んでるので乗ることはほとんどありませんが、京都に住んでた頃はよく阪急電車に乗っていました。
京都・河原町から大阪・梅田までには、最短時間で到着できる特急を使います。
最近は特急でも3ドア車が増えてきていますが、阪急の特急といえばやはり2ドアの2人掛けシートがズラーっと並んでるあの車両。

阪急になじみのない人に分かりやすく伝えるために、アスキーアートなんかできないのに無理して書くと

横一列の3ドア車がこうだとすると……
--------ドア---------ドア----------ドア-----------
・・・・・・・    ・・・・・・・    ・・・・・・・    ・・・・・・・

・・・・・・・    ・・・・・・・    ・・・・・・・    ・・・・・・・
--------ドア---------ドア----------ドア-----------

2ドアの阪急の特急は……
--ドア---------------------------------ドア------
 : : : : : : : : : : : : : 

 : : : : : : : : : : : : : 
--ドア---------------------------------ドア------

ちなみに「・」は座席です。
こんなんで伝わってるでしょうか。
まあ、私にはAAは無理だということしか伝わってないでしょうか。
せめてもの奮闘加減くらいは伝わってないでしょうか。

もうひとつ、阪急の車両といえば日よけ。
上から降ろすのではなく、下から引き上げる日よけ。
下から引き上げるにしてはやや重量感のあるアルミの日よけ。
座ったままでは上げにくく、腕に力が入らないときはわざわざ立ちあがらないと持ち上がらないような、日よけにしては重い日よけ。
河原町駅から西院駅までの地下路線をすぎ、地上に上がったとたん日差しがカーっと差し込んできて乗客が一斉にガッチャンガッチャンと音を立てながら引き上げる光景が風物詩となるような、あの名物日よけ。

ちなみに日差しがそれほどキツくなくなり、無用となったときはドーン!とこれまた日よけらしからぬ音をたてて収納します。
雲がかかってきて「もう日よけはいらないかなー」と思ってドーン!と収納したけどやっぱり雲が晴れて日差しが差し込んできたりしたときは「ああもう!!」という気分でもう一度よっこらせと日よけを上げます。
最近の車両は、日よけがこのタイプじゃなくて普通のものが増えてきてますが、やはりこのアルミの「ああもう!!」が阪急らしくてウザいながらも好きです。

鉄ちゃんのような知識がないので、この日よけがどのくらい珍しいのか分かりませんが、とりあえず私は阪急以外でこのタイプの日よけを見たことがありません。
ので、関西に来て初めて阪急に乗ったときは「なんじゃこりゃ?」とそこそこ驚きました。

しかし京都に住んでしばらく経ち、阪急電車に乗りなれた頃には、観光客とおぼしき人が日よけの使い方が分からず「???」となっているときに、さらっとガッチャンをやってみせるくらいの阪急電車乗りになりました。

つーか話がそれ過ぎてる。
ここまできてまだひとつもタイトルの「公共マナー」についての記述がない。
まあいいや。

話のそれついでにいえば、京都の人間が利用する主な私鉄は近鉄、京阪、阪急の3つです。
それぞれに特急列車があり、より軽い運賃と時間で遠方まで行くことができます。
しかし「近鉄特急」「京阪特急」という言い方はよく聞きますが、「阪急特急」という言葉は聞いたことがありません。
だからどうしたという話ですが。

さてさてそんな阪急特急。
こんな言い方はなくても頑なに「阪急特急」。
2人掛けシートがズラーっと並んでいる座席だと、座っている空間というのは自然とそこそこ密な感じになります。

さて、こんな空間で。
のんびりと車窓の景色を眺めながら、京都・河原町から大阪・梅田までの時間を過ごしていると、隣に若いおねえちゃんが座りました。
年のころはハタチそこそこ。
ギャル丸出しです。

ちょっと香水つけすぎじゃなかろうかとその臭いに少々辟易しながらも、まあ合コンかなんかで張り切ってるのかもしれないなあ、お年頃だからなあ、とあまり気に留めずに再び車窓に目を移しました。

右手には京都西山の風景。
この山から流れる水は全国的にも名水とされており、サントリーの工場があります。
私の大好きなプレミアムモルツもここで生み出されています。
おいしい水だからできるおいしいビール。
そんなことを考えながら、後ろに流れる大山崎ウイスキー工場の風靡な建物を目で追います。

と、突然に、こんな感慨を吹き飛ばす刺激臭がぶおっとやってきました。

「……?!?!?!?!?!?!」

かなりの刺激臭です。
とりあえず、電車の中では鼻にしない刺激臭です。
目にもキます。

と、その臭いが漂ってくる方に顔を向けると、隣のギャルねーちゃん。
ていね~~いにマニキュアを塗っています。

えーっと、えーっと、うーん、こういう場合はなんて言えばいいんだろうか。
あ、「あきれてものが言えない」がしっくりくるな。
いや、そういう問題じゃなくて。

なんで電車でマニキュア塗ってんだろう。
なんで家でやらないんだろう。
あ、家で塗ってきたけど、どう~~~~しても気にかかるムラを見つけてしまってささっと上塗りしてるだけかもしれない。

否、明らかにこれは今塗り始めている。
その証拠に、左手の親指、人差し指には着色が施されていて、今中指が進行中で、薬指と小指、そして右手の5本の指はスッピンだ。

しかしギャルねーちゃんは、私の観察視線には少しも気に留めず、せっせせっせとマニキュア塗りに勤しんでいます。
比較的密な空間である、2人掛けシートがゆえに、その臭いは強烈です。

と、ギャルねーちゃん。
左手の5本をすべて塗り終わり、次は右手を塗り始めるべくブラシを左手に持ち替えました。

今だ。

「ちょっとごめんね。それ、めちゃめちゃ臭いからやめてくれへん?」

きょとんとするギャルねーちゃん。
その表情から察するに、自分がやっていることは良くないことだとは分かってはいるものの、でもできればやめたくない……という気持ちのようです。

うん、その気持ちは分かるよ。
だって左手だけがきれいに塗られてて、右手はスッピンだもんね。
この状態でいるのはかなりカッコ悪いよね。
全身をおシャレで固めてるのにこの手は恥ずかしいよね。
でも、だからこそ、私はこのタイミングを待って声をかけたんだよ。
ぐわははははは。

「ちょ……中途半端……」と言いたげなギャルねーちゃん。
しかし私が「ごめんね。ありがとう」と、“謝罪と御礼の2点セット”という、一見下手に出ながらもそのくせこの上なく強制的な言葉をニッコリ微笑みながら発すると、素直にマニキュアをカバンにしまいました。

……勝った。

ギャルねーちゃんとの熾烈な戦いに見事勝利。
これで、不愉快な刺激臭から解放されました。
不憫なギャルねーちゃんは、ちぐはぐな我がの手を見ながら悲しげにうつむいています。

……と、やおら化粧ポーチを取り出し、コンパクトを開け、ファンデーションを塗り始めました。

いや、それもあかーん!!

しかし、私はここでその言葉を言えません。
なぜなら、マニキュアを注意するときに「臭いから」と言ってしまったからです。
ファンデーションは臭くありません。

あ~しまった!
マニキュアのときに優しさなんか出さず、普通に「やめて」って言えばよかった~!!

今度はどのタイミングで何と言おう、どこで声をかけよう……とあれこれ考えあぐねているうち、ギャルねーちゃんは高槻市駅で降りて行きました。

ここで降りるんかい!!
梅田で降りんじゃねーのかよ!!
いや、別にいいけど!!
こちとら勝手に梅田と決めてかかって長期戦の構えで思案してたよ!!
結局なんにも言えなかったよ!!
完全に負けだよ!!

というわけでギャルねーちゃんとの戦いは1勝1敗となりました。
痛い敗北でした。


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プロフィール

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岡田真理・著
(文藝春秋社)


よくわかる自衛隊 (楽しい調べ学習シリーズ)



志方俊之・監修
岡田真理・文
(PHP研究所)



―岡田真理―
フリーライター。昭和52年生まれ、福岡県香春町出身。同志社大学工学部中退。平成17年、陸上自衛隊予備自衛官補(一般)に志願。50日間の教育訓練を経て、平成19年、予備自衛官に任官。現在も任用継続中。全国の陸海空自衛隊各部隊を取材し、「女子高生にも分かる国防」をモットーに執筆活動を行う。

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