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■富士登山

それは、ある日の飲み屋での会話、しらせ艦長の何気ない一言から始まりました。

「今度、富士山登るんだよ」
「そうなんですか? いいですね~。私も一回登りたいと思ってるんですよ」
「じゃ、一緒に行く?」
「いいんですか?! ぜひお願いします!!」
「じゃあ、登ろう」
「はい! いつですか?」
「あさって」
「あ……あさっ……て……?!?!」

登山というものをよく知らないのですが、ニッポンイチの山、富士山へ登ろうという決断を、こんな直前にしてもよいものなのでしょうか。
物心両面の準備というのは、こんな短期間でできるものなのでしょうか。

しかしここは飲み屋。
「あさって……?」と一瞬戸惑いながらも、ビールジョッキをタン!と置き、「よろしくお願いします!!」と酔いに任せてしまうのです。
予備自衛官補に志願したときから、まったく成長していません。
まあ、お酒の力があるからこそ、なんにでも挑戦できるのだとは思いますが。

そして翌々日。
飲み屋での会話から48時間後。
私は富士山5合目の吉田口に立っていました。

5合目出発は22時。
徹夜で登山し、9合目あたりで御来光、そして早朝に頂上へ、というスケジュールです。
メンバーは、海上自衛隊『しらせ』の艦長さん、運用長さん、航海士さん、そして私の4人。
登る前から、海の男お三方の足を引っ張りまくるのが目に見えてます。

「岡田さん、登山はよくするの?」
「え……っと……。前に登山したのは……。あ、空挺レンジャー取材が登山といえば登山でしょうか……」
「へー、空挺レンジャーについてったの? すごいね! じゃあ、大丈夫だね!」

空挺レンジャーの取材をした、レンジャーと一緒に山に行った、と言うと、どの自衛官さんにも「すごいね!」と言ってもらえます。
でも実際は、自力で登ってないんです。
体にロープを括りつけ、空挺団広報さんに引っ張り上げてもらってたんです。
荷物もぜーんぶ防衛省広報さんが持ってくれてたんです。
「登った」なんて、口がぶっ裂けても言えないんです。

こんなヤツが富士登山……。
大丈夫か?

さて、5合目の駐車場。
あたりは真っ暗なので、ヘッドライトを着け……ようとしたら、ゴムの勢いでぶん投げてしまい、単4電池3本ばら撒いてしまう始末。

「大丈夫?」
「あの……電池が見当たりません……」

艦長さん、運用長さん、航海士さんがご自身のヘッドライトであたりを探してくれ、車の下に入り込んだ電池をストックで取ってくれました。
ああもう、まだ一歩も登ってないのにこの足の引っ張りよう。

「はい、電池」
「ありがとうございます。すみません」
「ライトはつく? 壊れてない?」
「えーっと……つきません……」

ぶん投げた勢いで、電池の接触部分が壊れてしまいました。
諦めて手持ちライトで行こうと思ったら、艦長さんが「両手は使えるほうがいい」と、ヘッドライトの修理をしてくれました。

接触部分にガムのアルミの包み紙を挟んで、「こうすれば電気は通るはず……」。
で、スイッチオン、点灯!!

「あああああああありがとうございます!!!」
「良かったね!」

出発前からこの調子でした。
この後、実際の登山でどれだけのご迷惑をお掛けしたのか、もう言わずもがなです。
登るスピードがお三方に比べて格段にノロく、高山病とまではいきませんでしたがやはり基礎体力がダメダメですぐにゼーハー、岩場ではどこに足を掛けてどう登ればいいのかオロオロ……。

でも、海の男たちは優しくて。
そして指示が的確で。

「自分のペースで大丈夫だからね」
「疲れて来たね、よしそこで休もう」
「そろそろ水分摂ったほうがいいよ」
「ここは杖なしで、手で登ったほうがいいよ。杖持っとくから」
「そこの岩場の窪みに足を掛けて、右手でその岩をつかんで」
「ここは立ったままじゃなくて中腰のほうが登りやすいよ」

ヘッドライトの修理もそうですが、生きる知恵、あらゆる行動能力の高さというのは、やはり自衛官すごすぎです。
「私がダメダメなんじゃない。この人たちがすごすぎるんだ」とこの期に及んで言い訳ばかりが頭をぐるぐる回るほどにすごい人たちです。
まあ、私がダメダメなのと、お三方がすごいのと、両方なんですが。

8合目。
あまりにも私がゼーハーだったので、航海士さんが山小屋で酸素マスクを買ってきてくれました。
「ありがとうございます……」と早速スーハーしようとしたら、手が滑ってキャップ部分のマスクがこんからこんこーんと崖の下へ……。

もう、なにやってんだか。
どんだけ足手まといになるつもりなんだあああああもう……。

せっかく買ってくれたのに、マスク落としてすみません。
そして富士山の自然破壊をしてすみません。
下の山小屋の屋根に引っ掛かってたので、なにかの修理のときにでもうまく拾ってもらえますように……。

9合目。
そろそろ御来光ということで、小休止。
こんなダメダメな人間にも、ちゃんと太陽は昇ってきてくれました。

IMGP0300.jpg

IMGP0314.jpg

IMGP0328.jpg

ああ、お天道さまってすごいなあ。
すごい人にも、ダメな人にも、等しく日の光は降り注ぐんだなあ。
どんな人にも、同じように太陽は照らし、雨の恵みはやってくるんだなあ。
お天道さまって平等なんだなあ。
しんどいのなんのって、文句言っちゃいけないなあ。

辺りが明るくなり、上を見上げると、頂上に日の丸がハタハタとなびいています。
しかし、この9合目から頂上が……遠い……。

とりあえず、一歩。
また一歩。
赤んぼのようなどんな小さな一歩でも、足を前に出せば、いつかは辿りつく。
一歩……一歩……。

そして、登頂!!

IMGP0331.jpg

ふっじっさぁぁぁぁーん! ふっじっさぁぁぁぁーん! 高いぞ高いぞふっじっさん! イェア!!

おにぎりがとても美味しかったです。

しらせ艦長さん、運用長さん、航海士さん、本当にありがとうございました。


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プロフィール

okadamari

Author:okadamari

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岡田真理・著
(文藝春秋社)


よくわかる自衛隊 (楽しい調べ学習シリーズ)



志方俊之・監修
岡田真理・文
(PHP研究所)



―岡田真理―
フリーライター。昭和52年生まれ、福岡県香春町出身。同志社大学工学部中退。平成17年、陸上自衛隊予備自衛官補(一般)に志願。50日間の教育訓練を経て、平成19年、予備自衛官に任官。現在も任用継続中。全国の陸海空自衛隊各部隊を取材し、「女子高生にも分かる国防」をモットーに執筆活動を行う。

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