■アメリカの自衛隊

ある20代の女の子と話していたときのこと。
会話の中で、その女の子が「アメリカの自衛隊が~」と口にしました。

「アメリカの自衛隊……?なにそれ?」
「え?アメリカの自衛隊って……アメリカの自衛隊ですよ」
「あ、防衛駐在官のこと?」
「ボウエイチュー……?なんですかそれ?」
「ああ、ごめん、忘れて。で、アメリカの自衛隊?……が、どうしたの?」
「そこにアメリカの自衛隊があるじゃないですか。そこの道曲がったとこにある基地」
「ああ、米軍のこと?!」

その子の中では、「米軍」は「アメリカの自衛隊」という言葉に置き換えられていました。
いやーこれがジェネレーションギャップか。
いやいや、もちろん若い子でも「米軍」という言葉を知ってる人はたくさんだろうから、ジェネレーションギャップではなくて……えーと、これはなにギャップなんだろう。

年配の方が、自衛隊のことをうっかり「日本軍」と口馴染みにつられて言い間違うのはこれまでも聞いたことがありましたが、「アメリカの自衛隊」は初めてでした。
軍とか自衛隊のことに馴染みがなく、でもテレビで「自衛隊」という言葉には馴染みがある彼女のような人にとっては、「ミリタリー的な組織」イコール「自衛隊」になってしまっているのかもしれません。

日本にあるミリタリー組織は、「日本の自衛隊」。
で、アメリカにあるミリタリー組織は、「アメリカの自衛隊」。

自衛隊という組織ができて60余年。
以前は「『軍』ではなく『自衛隊』と言い変えるのはおかしい」という意見ばかりを耳にしていましたが、とうとう「アメリカの自衛隊」なんて言葉を使う若者まで出てくるようになって……って、まあこれは彼女の独特な感覚かもしれませんが。

「軍」か「自衛隊」か……組織の名前を変えた方がいい、否、変えない方がいい的論はちょくちょく沸き起こります。
同様に、現在自衛隊が使っている「1佐、2佐、3佐、1尉、2尉、3尉」という階級も、ちゃんと軍的に「大佐、中佐、少佐、大尉、中尉、少尉」に戻したがいい……という論もあります。
「1佐とか3尉とかってなんだよそれ。変だよ」と。

でも、1佐とか3尉という呼び方を変だと感じる人は、もう随分減っているんじゃないかなーと思います。
私もそのひとりです。

というのも、私が初めて触れた「ミリタリー」は「自衛隊」だからです。
初めて耳にし、口にした「ミリタリーの階級」というものは、1佐とか3尉だったんです。
だから、大佐とか少尉なんて階級呼称にはさっぱり馴染みがなく、旧軍時代の小説に「中佐」とか「上等兵」とかが出てくると、「中佐は2佐ね。んで上等兵はえーと……あ、士長か」と頭の中でいちいち置き換えて読んでいます。

これは私だけでなく、当事者の自衛官も世代に寄っては同じようです。
具体的に何年生まれから上は旧軍式の階級呼称に馴染みがあって、それより下は自衛隊式で……とくっきり分かれるわけではありませんが、私の知る限りでは「ガンダム世代かエヴァンゲリオン世代か」でざっくり分かれるようです。
ガンダムは「シャア少佐」で、エヴァは「葛城1尉」ですしね。

まあ、若い方でも「エヴァより先にガンダムを見た」って場合もあるでしょうし、自衛隊入隊前に旧軍モノに触れる機会があった方もいるでしょうし、そうなると馴染みのある階級呼称も旧軍式になったりするんですが。

そういえば私も世代でいうとエヴァよりガンダムだなぁ。
でもそこまでガンダムはハマらなかったんですよねぇ。
エヴァもそこまでがっつり見てませんが。
まあ、私の場合はガンダムとかエヴァよりも入り口が自衛隊だったので。

ので、私のような人間や若い世代にとっては、「1佐」「3尉」の階級呼称はまったく違和感がないんです。
「アメリカの自衛隊」はさすがに斬新過ぎだと感じますが。

で、なにが言いたいかというと、「自衛隊という名前を軍に変えるべきかどうか」について私の意見……長くなってきましたので続きはまた今度。

「自衛隊という名前を軍に変えるべきかどうか」。
本当にさまざまな意見があると思います。
ですが、世代や人に寄っては「1佐とか3尉の階級呼称」に違和感がまったくなかったりするし、なんだったら「アメリカの自衛隊」なんて言い出す人までいる……というのを頭の片隅にでも置いておいてください。

いや、もちろん、「違和感があるかどうか」「馴染みがあるかどうか」よりも、組織や階級の本質で論じるべきなんですが……長くなってきましたので続きはまた今度。

みなさまのご意見も頂けると嬉しいです。


余談ですが、現在の最高齢自衛官は、統合幕僚長の河野克俊海将(1954年11月生まれ)です。
自衛隊創設が1954年7月1日なので、今の自衛官は全員が自衛隊創設後に生まれているということになります。

ちなみに、自衛隊創設前に生まれた最後の自衛官は、2014年10月14日まで統合幕僚長を務められていた岩崎茂氏(1953年生まれ)でした。

「現役自衛官が全員、生まれたときから自衛隊という組織が存在していた」という状況になったのは、2014年10月15日から。
つい最近ですね。

若い隊員には、「おじいちゃんおばあちゃんも戦後生まれ」という人もいます。

人々が「実感」する自衛隊というのも、以前とは違うものになってきているのかもしれません。


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■コメント

■Re:アメリカの自衛隊 [yoshino]

いつも楽しく拝読しています。
自衛隊は日本の国防をになう組織ですが、日本一国だけではなく、同盟国や国連各国の軍隊と歩調を合わせた活動を行っています。階級の英語表記も「少尉」・「中佐」等の世界標準となっていますから、国内での表記も改めるべきだと思います。
自衛隊が国防軍であることを字面だけで否定し続けるのは、いい加減やめるべきだと思います。その方が、自衛官の方々の志気も上がるのでは。

■ネーミングは重要 [りくじ]

色々なご意見あると思いますが、私は以下の通りです。①階級呼称については、軍隊呼称とする。「小林一佐」や「仁井二尉」などややこしい呼び名を回避できる。②「自衛隊」はそのまま。馴染み、親しみがあり、変更すると予算を喰う。専守防衛の心意気を表現できる。③自衛隊は、立派な国軍です。法整備が追い付いていないですが。③を前提として①②の意見としました。あと、部隊名も軍隊呼称がよいと思います。普通科とか特科とか、実体を表していませんよね。なんのこっちゃよくわからん。

■Re:アメリカの自衛隊 [某組織の元予備]

元アメリカの自衛隊隊員が通りますよ~♪(o・ω・)ノ))

■軍事は難しい [北の予備自補]

日本の場合、歴的観点から軍隊についてポジティブなイメージを持ちにくいような歴史観を植え付けられているので、単純に憲法や法の問題だけな気がします。実際に外国人に自衛隊と軍隊って何が違うの?と聞かれるとうーん…となります。話すときもJGSDFって英語で言うよりもJapan Armyのほうがすぐ伝わりますしね。

■難しいですね [アーサー]

個人的には、大中小は、大納言とかの官職の伝統から来ていると思います。やはり伝統に基づいてほしいですね。

しかし、実務面から考えると、左翼のネタにされるばかりで、メリットがないから、誰も手をつけないのでしょう。

まず、憲法を改正して、国防軍にして、それからになるかと思います。

兵科呼称も変えてほしいですね。歩兵、砲兵でいいと思います。

自衛隊創設当初は、戦車も特車でしたが、戦車になりましたからね。

自然になじむといいのですがね
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プロフィール

okadamari

Author:okadamari

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岡田真理・著
(文藝春秋社)


よくわかる自衛隊 (楽しい調べ学習シリーズ)



志方俊之・監修
岡田真理・文
(PHP研究所)



―岡田真理―
フリーライター。昭和52年生まれ、福岡県香春町出身。同志社大学工学部中退。平成17年、陸上自衛隊予備自衛官補(一般)に志願。50日間の教育訓練を経て、平成19年、予備自衛官に任官。現在も任用継続中。全国の陸海空自衛隊各部隊を取材し、「女子高生にも分かる国防」をモットーに執筆活動を行う。

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