■小林よしのり氏にケンカを売ってみる。

さーて岡田さん、今日はエライ態度に出ましたこのタイトル。
いや、別にケンカを売るつもりはないんですけどね。
ちょいと疑問に思ったもので。

小林よしのり氏に関しては、「ズッコケ」で既に「完全に気がフれています」とかケンカ売った書き方してるんですが、いやでもこれケンカ売ってるワケじゃないんですよ。
最大の賛辞なんですよ。
「完全に気がフれています」の後に「天才すぎます」ってちゃんと書いてるし。

さて、今回は何でケンカを売ろうとしているのかというと、1月30日に発売された「新戦争論1」です。
翌日31日に知人から「もう読んだ?おもしろかったよ。感想聞きたいから読んで」と言われ、本屋さんで素直に購入し、年に1~2回しか行かない美容院に持ち込み、髪の毛やってもらいながら一生懸命読み、覗き込んできた美容師さんに「あ、戦争論新しいの出たんですか?僕も昔読みましたよ~」とか言われ、「相変わらず分厚いですよ~。あ、そうそう、私最近白髪増えてきたんですけど染めるのってどのタイミングがいいですか?」とか聞きながらも一生懸命読み進めた「新戦争論1」です。

タイムリーなISILの話なんかもあり、日本国民としての心持ち的な話あり、とても面白く読んで全体的には「うんうん、私もそう思う」でした。
(もちろん別々の脳みその持ち主なので、「いや、ここんとこはちょいと意見違うな~」なところもあるんですが)

しかし、すご~く引っかかったのが
「第15章 国民主権なら徴兵制である」
の部分。

まず、この第15章の小林よしのり氏の意見を箇条書きで要約します。

・集団的自衛権の行使で自衛隊の志願者が減ったら、その先には「徴兵制」もあり得るという意見に対して、自称保守&ネトウヨは、「徴兵制は合理的ではない」と反論する。
・自称保守&ネトウヨは、「戦争で死ぬのは志願した自衛官だけだ」、「我々には関係がない」と考えているのだろう。これは当事者意識がない。
・日本国憲法には、主権は国民にあると書いてある。「国民主権」ならば、国を守る主体が本来、国民にあるとするのが当然である。
・徴兵制が不合理であるという理屈はいくらでもひねり出せる。自衛隊に人が集まらなくなれば、それはすぐ崩壊する。今の日本人は「国民意識」があまりにも薄い
・第二次大戦中は少女ですら、国家国民のために死を覚悟していた。
(この「少女ですら~」は、第14章で描かれています。が、長くなるので省きます。あんまり詳しく書くと著作権的にもご迷惑なので)

→「ごーまんかましてよかですか?」
徴兵制は単に合理性の問題ではない。
ネットというバーチャルな世界で、匿名でタカ派発言をする者たちを、戦場というリアルな世界に引っ張り出して、当事者意識のある「国民」を育てるために、徴兵制は必要だ。

以上、要約終わり。

あ、この要約はあくまでも岡田の脳みそを通した要約です。
要約なのでもちろんはしょってますし、さらに本全体の流れの中でのこの章ですし、そもそもこの本は漫画なので絵やフォントなど細部まで読者に与える印象などを考慮した上での作品ですから、ニュアンスは随分違います。
岡田がこうやって勝手に書き出したのはあくまでも「岡田の脳みそを通した要約」です。
上記の要約だけでは、小林よしのり氏の意見の正確なところは伝わりませんので、氏の意見は本を読んで判断してください。
まかり間違っても、この要約を読んだだけで小林よしのり氏に対してどうこう思わないようにお願いします。
(本全般を読むに、どうやら小林よしのり氏は最近方々から文句的なことを言われているようなので、私もなかなか気を遣っています)

ではここから、上記の小林よしのり氏の意見に対する岡田の考えです。

小林よしのり氏の意見では、
<当事者意識のある「国民」を育てるために、徴兵制は必要だ>
とのことですが……。

私も元来どうしようもないパッパラパーで、ほんの10年前までは国民意識とか国防とかひとつも考えたことがなく、「自衛隊?なんだそれ食えんのか旨いのか?」な人間だったわけで、そんな人間が予備自衛官補で50日間の教育訓練を受け終わったらあら不思議、「改めて〝日本人〟になることができました」とか『いざ志願!おひとりさま自衛隊』にも書いちゃうくらいになったんで、「当事者意識」、「国民意識」を育てるために、自衛隊での教育訓練は大変有効であるというのには大きく頷きます。
自衛隊の教育は本当に素晴らしいです。

でも。でも。
自衛隊は教育機関ではないんです。
自衛隊は、国防のための組織なんです。

もちろん、国防のためには人材育成が必要ですから、入隊した隊員には教育を行います。
でもそれは、あくまでも「国防」を目的とした、「国防」を実践するためのものなんです。

自衛隊では、教育隊という部隊が、教育を専門的に担当しています。
(特別な教育は「学校」でも行われます。防衛大学校とか、幹部学校とか、富士学校とか、術科学校とか)
民間人から公募で予備自衛官(徴兵制が行われていた旧軍でいうところの「予備役」)になるためには、予備自衛官補として教育訓練を受けるわけですが、この予備自衛官補の教育訓練も教育隊で行われます。

もし徴兵制となれば、その教育も教育隊で行われることになると思いますが(他に適した部隊はありませんので)、教育隊にそんな人員はいません。
人が足りません。
教育隊は常に自衛官候補生や陸曹候補生や予備自衛官補の訓練で埋まっていて、スケジュールは一年中パツパツで、徴兵された人たちを教育する場所もありません。
徴兵された人たちを教育するために、自衛官の定員も駐屯地もどどーんと増やす!のであれば可能かもしれませんが……そんな防衛予算はどこから捻り出すんだろう……徴兵された人への教育訓練手当てもでかい金額になるだろうし……。

さらに、教育隊の教官、助教は優秀な人たちです。
これは、私の感覚的なことで判断した「優秀な人」なのではなく、実際にある基準から優秀であると判断された人たちしか教育隊で教官、助教を務めることはできません。
(その「基準」は言っていいのかいけないのか判断が付かないのでここでは書きません。そして、「教育隊の教官、助教は優秀な人たちである」からといって、「その他の部隊の人は優秀ではない」ワケでは決してありません。当たり前ですが)
「自衛隊の素晴らしい教育」は、この「優秀な人たち」であるからこそ実践できるものだと私は考えます。
(これは私な感覚的なことです。でも当たってる気がします。たぶん。まあ「教育」なのでこれも当たり前っちゃあ当たり前ですが)

徴兵制で教育隊に多くの人員が必要となった場合、他の部隊から優秀な人材がごそっと教育隊に移されることになります。
教育隊以外の部隊から、優秀な人材がごそっと消えてしまいます。

これは大変危険です。
なぜなら、国防任務は常に継続しなければならないので。
優秀な人は教育隊にも必要ですが、他の部隊で行っている国防任務にも絶対に必要なので。

さらに、国防任務には、普段からの継続した訓練が欠かせません。
隊員一個人としても、優秀な隊員が欠けた部隊としても、やるべき訓練が継続できないのは国防の大きな痛手です。
今日の、明日の、そして将来の国民の生命と財産を守るために、訓練の中断はあってはならないことです。

スポーツ選手は普段から練習を欠かしませんが、自衛官も同じで、訓練は継続してやらないとすぐにニブってしまいます。
テニスプレーヤーなんかの個人競技でも練習を継続できないと試合に大きく響きますし、野球やサッカーのような団体競技でも優秀な選手が抜けてしまうのはチームとして大打撃です。
例えば昨年のカープではエルドレッドが不振で2軍落ちしてしまってからというもの……あ、これは完全に個人的な思いが強すぎますね。失礼しました。

大規模な災害派遣などがあったときでも、自衛隊の人材はそちらに回るので、どうしても普段の訓練ができなくなってしまいます。
東日本大震災でも、災害派遣終了後、派遣でやれなかった訓練を取り戻すのにとても大変でした。
徴兵制となれば、訓練を継続しなければならない多くの隊員たちが、教育隊に回らなければならなくなります。

自衛隊は、あくまでも「国防組織」です。
プロフェッショナルな技術や装備を持ち、厳しい訓練を継続し、一般国民に代わって国を守っている「国防組織」です。
徴兵制だろうとなんだろうと、この「国防」を妨げることは、どんなことがあっても行ってはならないと考えます。

もちろん、<当事者意識のある「国民」を育てる>ことに異論はありません。
しかし、その教育は自衛隊ではなく、しかるべき他の教育機関でやることだと思うんです。
小学校でも中学校でも高校でも、別の新たな形の機関でも。
そして、もしその教育機関に自衛隊的教育ノウハウが必要であれば、研修なんかのシステムを使えばいいと思うんです。
教育隊の教官・助教経験を持つ、元自衛官の方もたくさんいらっしゃいますし。

……というのが、岡田の意見です。
要は、「自衛隊の教育は確かに素晴らしいですよ。当事者意識のある国民を育てることも可能だと思いますよ。でも、自衛隊は国防のためにやることたくさんだから、よそでやりましょうよ。それだったら大賛成!」ってことです。

もし叶うのであれば、小林よしのり氏に直接お会いしてご意見をお伺いしたいところですが……。
こんなパッパラパーの相手なんかしてくんねえよなぁ。

というわけで、読者のみなさま。
この岡田の意見に「いーや、俺はこう思う!」などありましたら、ぜひぜひお聞かせください。
「こんな方法だったら国防と徴兵制両立できるんじゃね?」
「マジかテヘペロ」
なんてこともあるかもしれませんし。
こんだけ長々語っておきながらアレですが。

よろしくお願いします!


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プロフィール

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岡田真理・著
(文藝春秋社)


よくわかる自衛隊 (楽しい調べ学習シリーズ)



志方俊之・監修
岡田真理・文
(PHP研究所)



―岡田真理―
フリーライター。昭和52年生まれ、福岡県香春町出身。同志社大学工学部中退。平成17年、陸上自衛隊予備自衛官補(一般)に志願。50日間の教育訓練を経て、平成19年、予備自衛官に任官。現在も任用継続中。全国の陸海空自衛隊各部隊を取材し、「女子高生にも分かる国防」をモットーに執筆活動を行う。

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