■日本横断カープツアー その5

「まだ日本横断カープツアー続くのかよ!!」と呆れられそうですが、すみません、あと1回だけ。
すごく印象的なことがあって。

9月27日のズムスタの試合では、少しアクシデントがありました。
まあ、アクシデントというほどのものでもないかもしれませんが。

カープの4番、エルドレッドが打席に立ったとき。
エルドレッドは前半大好調で、でも後半不振に陥り2軍行き、しかし見事復活をして、トレードマークのヒゲを剃り、1軍に戻ってきていました。
優勝がかかった一戦一戦、エルドレッドは4番の使命を胸に、打席に立っていました。

ランナー1人を塁に置き、先制のチャンス。
が、エルドレッドは見逃しで三振となってしまいました。
この見逃した球はとても微妙なコースでした。

するとエルドレッド、「今のはボールだろ!!」とヘルメットを投げ捨てブチ切れ。
観客からも「入ってねーぞ!!」とブーイングが飛びます。

実はこの3日前の神宮球場でも同じような場面がありました。
やはり微妙なコースで、審判はストライクのコール、見逃し三振。
「今のはボールだ!!」と審判に激しく抗議をするエルドレッド。
そして、エルドレッドは退場となりました。

これ、ものすごーーーーーく痛かったんです。
優勝かけてもうひとつも負けられないカープ。
4番のエルドレッドが退場って、もうめちゃめちゃ痛いんです。
で、途中から主砲を欠いたこの試合、結局逆転負けとなりました。

エルドレッドの頭には、この3日前の記憶があったと思います。
私を含め、ファンもみんな3日前のことが脳裏をよぎりました。
「やばい……。また退場になる……。それだけはアカン……」

……と、エルドレッド、急に審判に背を向け、腰に手を当てながらうつむき始めました。
ちょうど私の席の前で、審判に背を向けたエルドレッドの顔がよく見えましたが、すごい形相で、ぐーっと、ぐーっと、奥歯を噛みしめて耐えていました。
こちらまでその殺気が漂ってくるような、鬼のような形相でした。

そのエルドレッドの様子を見て、ベンチから野村監督が飛びだしてきました。
そしてエルドレッドに代わり、猛抗議。
「ここでほっといたら、またエルドレッドが退場になるかもしれない」という判断だったのかなーと思います。

野村監督が抗議をしている間に、エルドレッドは自分の怒りを鎮め、ベンチへと帰って行きました。
やがて野村監督も抗議を止め、ベンチへ戻りました。

すると、またひとりの男が耐え始めました。
この日球審を務めていた杉永審判です。

野村監督からの猛抗議、そして四方を囲むカープファンからのブーイングを浴びせられた杉永審判が、1塁線上でやはり腰に手を当て、うつむき、ぐーっと、ぐーっと、鬼の形相で耐えていました。

耐えながらも、カープファンからの罵声は降り注ぎ続けます。
球場では、ときとして選手や審判の人格をまるで無視したような下品な罵声も飛んできます。
すべてのブーイングがそうだというわけではありませんが、3万人の大群衆から鳴り響くブーイングを、自分ひとりで受け止め、耐えなければなりません。

顔が壊れてしまうんじゃないかというほどの形相でぐ~~~~~っと耐えていた杉永審判ですが、やがてマスクをかぶり、静かにキャッチャーの背後に着きました。

杉永審判、どんな気持ちだったんだろう。
耐えている間、なにを考えていたんだろう。
どうやって自分を鎮めたんだろう。
どうやって気持ちを切り替えたんだろう。

私は「気持ちを切り替える」というのがとても下手くそです。
一度プッチーンと切れたら、いつまでもいつまでも引きずります。
なにか失敗をしたら、いつまでもいつまでもくよくよして、また新たな失敗を引き起こします。
もう37年も生きてるのに、「気持ちを切り替える」方法がサッパリ分かりません。

でも、選手や審判はそういうわけにはいきません。
すぐに次のプレーが待っています。
私みたいに、「あーもうダメだ。外の空気吸ってこよう」と一服してみたりということもできません。
何万人という人に囲まれた場でひとり孤独に耐え、ぐっと耐えたらすぐにまた全力でプレーをし、また正しい判断をしなければなりません。

エルドレッド、そして杉永審判の耐える顔。
あの形相を見て、耐えるということは、気持ちを切り替えるということは、こんなにも困難で厳しく、辛いものかと改めて思いました。

そして、それを実践している選手や審判ってほんとにすごいなぁと。
どの道でも、プロって体力だけじゃなくて精神力もすごいんだなぁと。

「気持ちを切り替える」。
この方法はまだ私には分かりませんが、あの日、ズムスタで見た2人の男の顔で、なにかそのきっかけが少し見えたような気がしました。

ちなみに杉永審判。
ストライクのコールをするときに、腕を左右に振り分けます。
右バッターだったら右へ、左バッターだったら左へ。
おそらく、選手や観客から見やすくなるようにという配慮なんじゃないかなーと思っています。
顔は怖いですが、たぶん、すごいいい人です。
と、勝手に思っています。


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プロフィール

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岡田真理・著
(文藝春秋社)


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志方俊之・監修
岡田真理・文
(PHP研究所)



―岡田真理―
フリーライター。昭和52年生まれ、福岡県香春町出身。同志社大学工学部中退。平成17年、陸上自衛隊予備自衛官補(一般)に志願。50日間の教育訓練を経て、平成19年、予備自衛官に任官。現在も任用継続中。全国の陸海空自衛隊各部隊を取材し、「女子高生にも分かる国防」をモットーに執筆活動を行う。

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