■【質問】集団的自衛権について

【質問】
5月16日は予備自衛官補の合格発表でした。
合格することができました。それもこれも岡田さんの著書やこのブログのおかげです。ありがとうございます。訓練がんばりたいと思います。
さて先週から世間を賑わせている集団的自衛権ですがご意見をお聞きしたいです。


【回答】
このご質問はずいぶん前に頂いたものです。
あ、その前に合格おめでとうございます!!!!!
訓練一緒にがんばりましょう!!

さて、集団的自衛権。
この方以外にも、たくさんの方から集団的自衛権がらみのご質問を頂きました。

ので、今回は集団的自衛権を含んだあれこれについて。
いつものように、ちょいと自衛隊に関わってるおばはんの個人的な考えとしてお読みください。

私は(というより誰でもそうだと思いますが)、戦争は絶対に起こって欲しくありません。
戦争は絶対に嫌です。
嫌です。
ほんっっっっっっっっっと~~~~~~~~に嫌です。

でも、もっと嫌なことがあります。

それは、「平和でなくなること」です。

小学校のとき、対義語の授業がありました。
「大きい」の対義語は「小さい」、「高い」の対義語は「低い」、とかそういった類のものです。
その中で、「『戦争』の対義語は?」という問題がありました。

はて……なんだろう??
小学生の私はあれこれ考えましたが答えは分かりませんでした。

そして、先生が答えを教えてくれました。
「『戦争』の対義語は、『平和』です」。

当時の私は「へー、そうなんだ」とそのまま覚え、テストに同じ問題が出てきたら「『戦争』の対義語……はい、『平和』ね」と解答してマルをもらっていましたが、大人になった今、そうではないんじゃないかと思っています。

戦争が起こっていなくても、平和でなくなる状況は発生してしまいます。

例えば、テロ。
アメリカ同時多発テロ事件。
あの当時、あの状態は平和だったと言えるでしょうか。

例えば、虐殺や人権侵害。
チベットでの弾圧。
これは平和な状態でしょうか。

日本でも1995年に地下鉄サリン事件が起きました。
現在も多くの拉致被害者が存在し、解決できずにいます。

これらはすべて、「戦争」ではありません。
でも、「平和」では決してありません。

私は、「戦争が起きていなければそれでOK」とは思いません。
「平和な状態」、「平穏な日々」を心の底から望んでいます。

自衛隊の任務は、平和な状態を維持すること。
「国民の生命と財産を守る」ことです。
警察や消防、海保、自治体などと共に、平和を守ることです。

平和を守るために、現状の制度でいいのか。
現状の制度のままで、自衛隊は「国民の生命と財産を守る」ことができるのか。
変えていくべき事はないのか。

その中のひとつが「集団的自衛権」だと思います。

私は、日本が集団的自衛権を保持したからといって、「すわ戦争だ!!」とは思いません。
「集団的自衛権→戦争」であれば、とっくに第三次世界大戦的なものが起きているはずです。
日本以外のほとんどの国が集団的自衛権を保持しているので。

また、「集団的自衛権→徴兵」という論もあります。
私も先日、あるお母さんから「集団的自衛権で息子が徴兵されるんじゃないだろうか」と心配そうに聞かれました。

……先の大戦で「戦争=徴兵」というイメージを持ってしまいがちだけど、当時は「日本国憲法」じゃなくて「大日本帝国憲法」だったんだよ。
今は「国民の義務」つったら「勤労」「納税」「教育」だけど、あの当時はその義務に「兵役」があったんだよ。
「兵役」が義務だったのは大日本帝国憲法で今の日本国憲法にはないよ。
あの当時は成人男性全員が今でいう私みたいな予備自衛官だったんだよ。
まあ、予備自衛官っていうより即応予備自衛官のほうが近いかな……ああ、このへんはややこしいからまた話すね。
とにかく、当時の成人男性はみんな、「予備役」っていう、リザーブの兵隊さんだったんだよ。そういう訓練を受けてたんだよ。
あなたの息子さん、戦闘機に乗れたりとか戦車動かせたりとか機関銃扱えたりとかの戦闘技術持って……ないよね。自衛官じゃなかったら。
現代の戦闘ってプロしかできないんだよ。予備自衛官の私だって、後方支援しかできないんだよ。
あなたの職場でもさ、素人に現場をうろうろされたら邪魔でしょ? 戦闘も同じなんだよ。自衛隊も同じ。
「うちの息子が徴兵されたらどうしよう」って心配は、野球なんてひとつもしたことがないのに「うちの息子が巨人からドラフト一位指名されたらどうしよう」って心配くらい御無用だよ。
集団的自衛権を持ったからって戦争が起きるわけじゃないけど、万万が一日本が戦争に巻き込まれても、現代の日本で徴兵はあり得ないよ。
大丈夫だよ。安心して!

……などなど話してるうちに、このお母さんは「そうなんだね。テレビじゃそんなこと教えてくれないから心配だったけど、安心したよ」とホッとしていました。

また、ある人からは「集団的自衛権ってなったら、これから自衛官がどんどん辞めていくんじゃないの? 大丈夫?」と聞かれました。
素で「え? なんで辞めるの?」と答えてしまいました。

「岡田さんは集団的自衛権ってなっても予備自衛官辞めないの?」
「そんなのひとつも考えたことなかった」

自衛官23万人全員に聞いてまわったわけではありませんが、自衛官はみなさん、覚悟を持って自衛官をやっています。
集団的自衛権ぽっちが何の影響も与えないくらい。
そんなお仕事です。自衛官って。

もちろん、「覚悟」なんてひとことで片付けていいものではありません。
みなさん、それぞれに悩み、葛藤し、時間をかけて腹をくくり、またくくろうと努力しています。

ご家族のみなさんも同じです。
自分の子供が戦闘員となることを選び、そのための訓練を重ねる……もちろん、反対される親御さんもたくさんいらっしゃいます。

さまざまな想いが錯綜する中、自衛官を続けているみなさん、それを見守られているご家族のみなさん……私には「ありがとうございます」としか言えません。

最近、若手自衛官から、私の書いたものを読んで「自衛隊に入りました」という声を度々頂くようになりました。
広報としてはひとつの成果なので嬉しくはあるんですが、同時になんとも言えない不安な気持ちにも駆られます。

私は彼ら、彼女らの人生に、大変なことをしてしまってるんじゃないだろうか。
私はとんでもないものを書いてるんじゃないだろうか。
万が一のとき、私は彼ら、彼女らの親御さんになんて謝ればいいんだろう。
もちろん、本人やご家族が納得した上で入隊したんだろうから、私がこんなこと思うのは失礼なのかもしれないけど……。
どうか、どうか、彼ら彼女らが無事でありますように……。

私の彼ら、彼女らに対する想いは、ご家族に比べたらとてもとても小さなものです。
でも、「彼ら彼女らが入隊するひとつのきっかけになる文章を書いた」程度の私でもこんな気持ちになっちゃうんです。
親御さんの想いは如何ばかりか……私にはその大きさを伺い知ることすらできません。

私の書いたものを読んで入隊した方々を含め、私にはたくさんの友人が自衛隊にいます。
当たり前ですが、この友人たちの身になにかあって欲しくありません。
いくら本人たちが「覚悟を持っている」と言っても、この素晴らしい友人たちの身になにかあるなんてことは、考えたくもありません。

また「友人である」という面だけでなく、私は自衛官の身にはなにかがあっては決してならないと思っています。

戦闘機や艦艇、車両など、自衛隊の装備品にはとても大きな税金が投入されています。
それは「人」も同じです。
各々を戦闘員として育成するために、とても大きな税金が投入されています。
その税金をムダにしないためにも、私は自衛官の身になにかがあっては決してならないと思っています。
各戦闘員の「覚悟」とは別の面で。

平和であるために。
国民の生命と財産を守るために。
そのための人材を失わないために。
果たして、現状の制度のままでいいのか。

集団的自衛権の是非は、そのうちのひとつだと思います。


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■コメント

■Re:【質問】集団的自衛権について [まぁにぃ]

其れなりに影響力をお持ちなので、事実確認を。
引用開始

その中のひとつが「集団的自衛権」だと思います。

私は、日本が集団的自衛権を保持したからといって、「すわ戦争だ!!」とは思いません。
「集団的自衛権→戦争」であれば、とっくに第三次世界大戦的なものが起きているはずです。
日本以外のほとんどの国が集団的自衛権を保持しているので

引用終わり
我が日本国が集団的自衛権をこの度保持したのかは議論があるでしょうが、
日本以外の全ての国が集団的自衛権を保持し、多くの国が行使しているのが現
実です。
自衛権は権利として個別、集団の別なく当然保持している物とし、それをどの
様に行使していくかを外交努力しているのが世界標準だと考えます。
釈迦に説法の感が有りますが、気になったため一言記しました。
乱筆乱文で失礼しました。
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プロフィール

okadamari

Author:okadamari

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岡田真理・著
(文藝春秋社)


よくわかる自衛隊 (楽しい調べ学習シリーズ)



志方俊之・監修
岡田真理・文
(PHP研究所)



―岡田真理―
フリーライター。昭和52年生まれ、福岡県香春町出身。同志社大学工学部中退。平成17年、陸上自衛隊予備自衛官補(一般)に志願。50日間の教育訓練を経て、平成19年、予備自衛官に任官。現在も任用継続中。全国の陸海空自衛隊各部隊を取材し、「女子高生にも分かる国防」をモットーに執筆活動を行う。

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