■2017年08月

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■「戦争に行く」は罰ゲーム?

ウーマンラッシュアワーの村本大輔さんが先日、こんなツイートをされました。







私は、この村本さんのご意見を否定する気はありません。
それぞれにそれぞれのお考えがあります。
ちなみに村本さんの弟さんは自衛官だそうで、戦争に対してはより思うところがおありだと思います。

また、余談ですが私個人的に村本さんは好きです。
ウーマンラッシュアワーさんも好きです。

ですが、このツイートを見て「ちょっと誤解されてるんじゃないかなー」と感じました。
そして、この誤解は村本さんだけではなく、結構多くの方に見受けられます。
今回は、その「誤解」について。

日本には、自衛隊という組織があります。
そして、「戦争に行く」のは自衛官です。
プラス、普段は企業などに勤務している「即応予備自衛官」、「予備自衛官」も招集されれば、同様です。

まあ、自衛隊は専守防衛なので、「戦争に行く」というより「戦闘行動を含む国防のための活動を行う」という言い方のほうがしっくりくるんですが。

ので、自衛官、即応予備自衛官、予備自衛官のどれにも該当しない人が、いわゆる「戦争に行く」をすることは決してありません。

戦闘はプロがやることです。
所定の訓練を受けた人が、戦闘に関わる所定のお仕事を担当します。
戦車の訓練を受けた人が戦車のお仕事をします。
戦闘機の訓練を受けた人が戦闘機のお仕事をします。
訓練を受けていない人に、それはできません。

自衛官であっても、戦闘機の訓練を受けていない人は戦闘機のお仕事はできません。
自衛官の中でも、「戦闘機のプロ」のみが、その担当をします。

自衛隊は、日本の代表として戦闘をします。
サッカー未経験者がサッカー日本代表に選ばれてワールドカップに出場することはあり得ませんよね。
サッカーのプロのうち、ワールドカップで試合をするに相応しいと選ばれた人だけが出場し、勝利を目指します。

サッカーの素人がワールドカップに出たら、負けてしまいます。
戦闘も同じです。
自衛官ではない人が戦闘に参加したら任務が遂行できません。
ワールドカップで負けても国民の命は無事ですが、戦闘はそうではありません。
任務の失敗が国民の生命や財産に直結するからこそ、それを担当する人は絶対にプロでなければならないんです。

……というおはなしは、「戦争法案反対!」騒動のときからちょくちょくしているんですが、これに対し「自衛官は特別だって言いたいのか」「偉そうに」というご意見を頂くことがありました。

「自衛官は特別だって言いたいのか」は、その通りです。
自衛隊のお仕事をすることができる「特別な人たち」が自衛官です。

でも、これは「自衛隊のお仕事に関して」です。
芸人さんは「漫才やコントなど、人を楽しませるお仕事」に関して「特別な人たち」です。
寿司職人さんは「お寿司などの料理を作るお仕事」に関して「特別な人たち」です。
それと同じように、「自衛隊のお仕事」に関して、「自衛官は特別な人たち」です。

また、「偉そうに」というご意見に関しては、「そう聞こえてしまってたらすみません」と平謝りするしかないのですが、同時に弁解したい気持ちもあります。

「戦争法案反対!」騒動のとき、「徴兵制になるぞー!」というご意見がありました。
それに対して「徴兵制になんかならないよ。自衛隊のお仕事はプロしかできないんだよ」というご意見が出ると、「あんなもん誰でもできる!」的なご意見が多々ありました。

当時はそういうのをよく見聞きしたので、多くの自衛官を友人・知人に持つ私が「自衛隊のお仕事はプロにしかできないんだよ」というおはなしをすると、どうしても「誰にでもできるワケねーだろ!自衛官たちがどれだけの努力をしてるか知ってんのか!!」的な思いが文章のウラに見え隠れして「偉そう」に見えたかもしれないなーと反省しています。

でも、ちょっとご理解頂きたいんです。
世の中には、「芸人は楽な仕事でいいなー。ちょっとしゃべって楽しそうにしてるだけでお金が稼げていいなー」という人がいます。
私はこういう人に対して「いやいや、芸人さんはすごく大変なお仕事でしょ!誰にでもできるお仕事じゃないんだから、それでお金を稼いで当然でしょ!!」と腹が立ちます。
私でも腹が立つくらいなので、当の芸人さんはもっと怒りを覚えたり、少なくともいい気はしないと思います。

腹が立てば、「芸人という仕事がどれだけ大変か」を言いたくなります。
「誰にでもできるもんじゃない」ということを言いたくなります。
すると、それを「偉そうに」と受け取る人も出てくるかもしれません。

余談ですが、以前、ある芸人さんが「芸人は楽して儲けてると言われて腹が立つ」と言った時、明石家さんまさんが「それでええねん。俺らはそう思われといてええねん」と、とても穏やかな笑顔で言われていたのを見たことがあり、すごいなーと思いました。
私も、少しでも明石家さんまさんの境地に向かえるよう精進したいです。

でも、私はまだ明石家さんまさんの境地に行けてないので、寿司職人さんに対して「こんなもん、ちょっと修業すりゃ誰にでもできる」と言う人には「その修業が大変なんだよ!!」と腹が立ちます。
プロとしての誇りを持ってお寿司を握っていらっしゃる方なら尚更です。

みなさんも、ご自身のお仕事やバイトなどを「楽だ」とか「誰にでもできる」と言われたらどんな気持ちになるかちょっと考えてみてください。
求人情報に「誰にでもできるカンタンなお仕事です♪」と書かれていることもありますが、そんな「誰にでもできるカンタンなお仕事」にも、多かれ少なかれの努力や忍耐は必要です。
人様のお仕事を「楽だ」とか「誰にでもできる」というのは、とても失礼なことですよね。

話は戻って、村本さんのツイート。
ツイートの中に「そーいうやつから順番に戦闘機に乗せる法案を提案したい」という文章がありますが、これは戦闘機パイロットさんにとても失礼だと思います。
少なくとも、明石家さんまさんのような境地に行けてない私は「戦闘機パイロットさんたちがどれだけの努力をしてるか知ってんのか!!」と腹が立ちます。

というか、戦闘機パイロットになるのってとっても難しいですからね。
「そーいうやつ」がもし「戦闘機に乗りたい」と言ったとしても無理です。
「そーいうやつ」が航空学生などを受験して合格して訓練して適性などなど試験をパスすれば別ですが。

そして、「絶対に戦争が起きても行きません」という文章。
これは「腹が立つ」というほどではありませんが、「いや、行く行かないじゃなくて、村本さんには無理ですよ」と思います。
村本さんが自衛官になるというのなら別ですが。
でも、「戦争に行きたくない」のならその意思はないでしょうし。
というか、村本さんはもう自衛隊を受験できる年齢を超えていらっしゃいますが……。
(国家資格などの技能をお持ちでしたら、技能公募予備自衛官になる道はありますが……などの細かい話は割愛)

「行く、行かない」以前に無理なことなのに、「行きません」と発言されるのは、心のどこかで「自衛官の仕事は誰でもやれる」って思っていらっしゃるのでは……ご本人にそのつもりはなくても、心のどこかでそういう認識がおありなのではと感じます。
これもやっぱり、自衛官に対して失礼な発言だよな~、と。

これが「戦争が起きても行きません」じゃなくて、「自衛官や予備自衛官にはなりません」だったら、「そうですか」で終わることなんですけどね。
「友達に漫才コンビを組もうって誘われたけど、芸人にはなりません」と同じで、「そうですか」で終わる話で。
でも、「なんばグランド花月の出演者が軒並み急な用件で出演できなくなったからって、僕は舞台には立ちません」ってその辺のド素人が言ってたら、「お前に舞台が務まるか!芸人さんがどれだけ努力してなんばグランド花月の舞台に立ってるか知ってんのか!!」って私でも腹が立ちます。明石家さんまさんのような境地に行けてないので。

でも、村本さんの他のツイート、そしてテレビなどでの発言を聞いていると、村本さんには決して、自衛官に対して失礼な発言をする意図はないように思います。

村本さんだけじゃなく、同様なツイートやコメント、発言をされる方はたくさんいらっしゃいますが、みなさん決して「自衛官に対して失礼な言動をしたい」と思っているわけではないんだと思います。
中には、自衛官が嫌いで嫌いでしょうがないという方もいらっしゃるかもしれませんが、自衛隊の災害派遣などの活動に対する世間のご意見から見るに、多くの方は「自衛官に対して失礼な言動をしたい」と思っているわけではないんだと思います。

でも、
「俺は戦争に行かない」
「だったらお前が戦争に行けよ」
「まず、総理から前線へ」
といった類の、自衛官に対して失礼な言葉はよく見聞きします。

これらの言葉を見聞きする度に、私は「戦争に行くこと(戦闘行動を含む国防のための活動)って罰ゲームみたいに思ってる人が多いのかな~」と感じています。
おそらく、その理由は「先の大戦」なんだと思います。

明治時代から昭和20年まで、日本には徴兵制度がありました。
(名前は「徴兵令」だったり「兵役法」だったりと時代によりますが)

これにより、軍人ではない成人男性は、基本的に全員が「予備役」となりました。
「予備役」は、今の自衛隊でいうところの「予備自衛官(即応予備自衛官も)」に該当します。
どちらも、「軍/自衛隊の訓練を受け、招集(昔は「召集」)を受けて軍/自衛隊の活動に従事する民間人」です。

「予備役」と「予備自衛官」とで制度や内容に違いは多々ありますが、一番の大きな違いは「志願によるものかどうか」です。
予備自衛官は志願した人がなるものですが、予備役は義務でした。
当時も軍人(いわゆる「職業軍人」)は志願によるものでしたが、予備役の方はそうではなく、「腹を決めて戦争に行った人」もいれば、「行きたくないのに行かされた人」、そして「無理やり行かされた戦争」で亡くなられた方もいらっしゃいました。

こういう背景から、「戦争に行くこと」を罰ゲームのような感覚で今もとらえている人が多いように思いますし、それは仕方のないことだとも思います。

でも、今は昔とまったく違います。
自衛官も、即応予備自衛官も、予備自衛官も、志願制です。

しかし、「戦争法案反対!」騒動が終わった今も、「今後また徴兵制が施行されるかもしれない。戦争が起きて自衛官が足りなくなれば、国民が無理やり予備自衛官にさせられて戦争に行かされるかもしれない」というご意見があります。
徴兵制に関してはこれまで何度も何度も書いてきたので「現代日本で徴兵制なんかねえよ!」のひと言でおしまいにしようかと思いましたが、さらっと。

上の方でサッカーの例えを出しましたが、もしサッカー日本代表の選手がケガ続出で、代わりの選手を日本代表に入れてもやっぱりケガ続出で、代わり、そのまた代わり……って最終的にサッカー未経験者のその辺のお兄ちゃんをサッカー日本代表選手にしたら、ワールドカップで勝てるでしょうか。
そもそも予選を突破できるでしょうか。

「すわ、戦争だ。自衛官を大募集したけどもう限界だ。自衛官が足りなさすぎる」となって急に徴兵制を施行して「自ら志願しなかった人たち」を無理やり徴兵して予備自衛官にして訓練したところで、「任務を遂行できない自衛隊」しか作れません。
国民の生命も財産も守れないような自衛隊しか作れません。
それ以前に、「すわ、戦争だ。自衛官を大募集したけどもう限界だ。自衛官が足りなさすぎる」となったら「徴兵した予備自衛官を訓練する自衛官」がいません。
「任務を遂行できない自衛隊」すら作れません。

というか、現代兵器の戦闘で、「すわ、戦争だ。自衛官を大募集したけどもう限界だ。自衛官が足りなさすぎる」となって急に徴兵制法案を作ろうとしたって、「法案賛成」「いや反対」と言い合ってるうちにドーン!で日本がぼっこぼこになってそれでおしまいです。
いや、「法案賛成」「いや反対」なんて言うヒマもなさそうな。

現代日本において、徴兵制はありえません。
「これって徴兵制が必要なんじゃね?」という状況になったときは既に日本がぼっこぼこだからです。
徴兵制を作る云々の話になった時点で日本という国が存続できてるかどうか。
……こんなこと、絶対起こって欲しくないですが。

日本がぼっこぼこにならないように、みなさんの大好きな友達や家族や「自分」を守るために、自衛隊さんたちは毎日、任務や訓練をがんばっています。

「戦争に行きたくない」
自衛官(や即応予備自衛官、予備自衛官)ではない人がそう思うのは当然です。
そりゃ行きたくないよな~と私も思います。
というか、自衛官だってできることなら戦争なんかしたくありません。
おうちで家族と一緒に幸せに過ごしていたいです。

当たり前ですが、自衛官だって「死ぬために自衛官をやってる」ワケじゃありません。
命がなければ任務を遂行できないからです。
自衛官は「任務を遂行するために自衛官をやってる」んです。
だから、「家族のため」「自分が死にたくないから」はもちろんのこと、「任務を遂行するため」にどんな状況下でも生きるための努力をします。

組織としても、大金を掛けて育成した自衛官を失うようなことはしません。
任務遂行に必要な人員確保は、任務遂行に不可欠です。

しかし、戦闘にはどうしても命の危険が伴います。
家族のため、任務のために生きなければならなくても、命の危険はあります。
みなさんその覚悟を持ち、あるいは覚悟を持とうと努力しています。

「罰ゲーム」という印象を持たれがちな「戦争に行く」ということ。
しかし、日本には自ら自衛官というお仕事を選んだ人たちがいます。
決して「罰ゲーム」なんかではなく、その道を自ら選んだ自衛官がいます。
みなさん誇りを持って、それぞれのお仕事をしています。

ほんの頭の片隅に……で構いませんので、多くの方がこの認識を持っていてくださると嬉しいです。


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―岡田真理―
フリーライター。昭和52年生まれ、福岡県香春町出身。同志社大学工学部中退。平成17年、陸上自衛隊予備自衛官補(一般)に志願。50日間の教育訓練を経て、平成19年、予備自衛官に任官。現在も任用継続中。全国の陸海空自衛隊各部隊を取材し、「女子高生にも分かる国防」をモットーに執筆活動を行う。

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