■2017年04月

■【質問】自衛隊に女性は必要ですか?

「女性自衛官の数を増やす」というニュースにからみ、以前こんなご質問を頂いていました。
が、肝心なご質問の文章がどこにあるか見当たらなくなり……頂いたご質問はすべて保存しているんですが、はて……どこ行った……。

ご質問をくださった方、大変申し訳ありません。
うろ覚えでお答えいたします。

以前、ある自衛官さんから「戦闘において、女性は邪魔な存在だ」というお話を聞きました。

戦闘では、さまざまなシーンがあります。
例えば、一緒に行動している仲間が撃たれてしまったとき。
このとき、撃たれた仲間を救護するのか、とりあえず仲間のことは置いといて戦闘を続けるのか……はその状況によります。
救護できる場合もありますし、それよりも戦闘を優先しなければもっと多くの被害が出てしまう場合もあります。

で、「とりあえず仲間のことは置いといて戦闘を続ける」をやらなきゃな場合。
撃たれてしまったのが男性の場合、一緒に行動をしている男性たちは「とりあえず仲間のことは置いといて戦闘を続ける」ができるそうです。
が、撃たれてしまったのが女性の場合、一緒に行動をしている男性たちは「とりあえず仲間のことは置いといて戦闘を続ける」ができず、本能的にその女性を救護してしまうそうです。
「とりあえず仲間のことは置いといて戦闘を続ける」がどれだけ大事かを頭では理解していても。

……で、「戦闘において、女性は邪魔な存在だ」というお話でした。

私は女性なので、このお話を聞いたとき、「そんなもんなのかー。男性は男性だったらほっとけるけど、女性は助けてしまうもんなのかー」とピンと来るような来ないような……でしたが、「子供」に置き換えるとなんとなく分かるような気もします。

なにか大きな災害が起きて、取るものも取り敢えず、周りのことをほっといてでも逃げなければならないような場合。
このとき、もし隣にいた人が動けなくなってしまったとしたら……。
動けなくなった人を助けたいけど、助けると自分の命も失ってしまう……というとき、動けなくなった人が同年代の女性で「私はいいから逃げろ!あなたも私も死ぬより、あなただけでも生きろ!」と言われたら、いろいろな葛藤を抱えながらも「自分だけ逃げる」という選択もできるかもしれません。
でも、動けなくなった人が子供だったら……見ず知らずの子でも、ほっとけないような……結果が分かってても助けようとしちゃうような……。
これも本能的なものなのでしょうか。

……と考えると、「戦闘において、女性は邪魔な存在だ」は納得できる気がします。

現在、自衛隊は「母性の保護」、「近接戦闘における戦闘(作戦)効率の維持」、「男女間のプライバシー確保」、「経済的効率性」の観点から、女性自衛官が就ける職に制限を設けています。

例えば、近接戦闘を担当する普通科部隊の「ナンバー中隊」と言われる部隊に女性はいません。
普通科部隊でも重迫撃砲中隊、本部管理中隊に女性はいますが、第1中隊、第2中隊……などのいわゆる「ナンバー中隊」に女性はいません。

普通科部隊にはレンジャーの隊員も多いのですが(レンジャーが必須の部隊もあります)、このレンジャーになるための訓練にも、女性が参加することはできません。
私がレンジャー課程訓練を取材した限りでは、「ひょっとしたらこれをやれる女性もごくごく少数いるのかもしれないけど……でも女性がこれやったらとりあえず生理は止まるだろうなぁ。将来の妊娠・出産にすげー影響しそうだなぁ」と思いました。
いや、私は医学の専門家でもなんでもないので、ただ「見ててそう感じた」というだけなんですが。
でもあれは完全に生理止まるよなぁ……と思います。

普通科部隊だけでなく、機甲科部隊(戦車、偵察)、施設科部隊、化学科部隊でも同様に、女性自衛官を制限している配置があります。

また、潜水艦にも女性の乗員はいません。
潜水艦は艦内のスペースに限りがあり、女性用のお風呂やトイレ、居住区を作るのが難しいからです。

一方、戦闘機パイロットは、これまで女性はいませんでしたが、この度女性にも門戸が開かれるようになりました。

陸上自衛隊で、看護職以外の一般職域に初めて女性が採用されたのは1967年。
その後、海上自衛隊、航空自衛隊でも採用が始まり、防衛医科大学校、防衛大学校にも女性が入学できるようになり、航空学生にもなれるようになり……と徐々に「女性もOK」が増えてきました。

ちなみに、予備自衛官に女性が採用され始めたのは1993年です。
結構最近ですね。
おかげで私も予備自衛官になることができました。

現在、自衛官のうち女性の割合は6%弱ですが、防衛省は2030年までに9%にするという目標を掲げているそうです。

……と前置きが長くなりましたが、ご質問の「自衛隊に女性は必要ですか?」。

「自衛隊の仕事で、これは女性じゃなきゃ無理だ」ってのはなにかあるかな~と考えてみたんですが、警備には必ず必要ですね。
有事の際は、国の中枢機関や防衛施設などの出入りが厳しくなるといわれています。
外国には、デパートやレストランに入る……なんてときにも入念なボディーチェックをされる地域がありますが、有事の際は、日本でもそういう光景を目にするようになるかもしれません(デパートやレストランでやるかどうかは分かりませんが)。

ボディーチェックを確実にしようとすると、女性相手には女性隊員しかできません。
日本にも外国人の方々の数が増えてきていますが、文化によっては「女性を男性が触る」なんて日本どころじゃないくらいタブーだったりします。
なんかあったら大問題に発展します。
「ボディーチェックを受ける人に、ご自身で体のあちこちを触ってもらって、それを見てチェックする」という方法もあり、これだと男性隊員でも可能ですが……これも文化によっては大NGだよなぁ。
日本人でも拒否反応を示す女性は結構いそうですが。

国の中枢機関や外国大使館などなど、いろんな場所に多くの女性が勤務している現状、やはり警備に女性隊員は必須かなーと思います。

さて、自衛隊の活動といえば、もひとつ災害派遣。
よく、被災地で自衛隊がお風呂を作ったりしますが、これも女湯の管理は女性隊員しかできませんよね。
アクシデントがまったくなければ、男性隊員がお風呂を準備して、女性被災者に入ってもらう……ことも可能でしょうが、女性が入浴中の女湯に隊員が入らなければならないようなこともあるでしょうし、そうなると男性隊員にはお手上げです。

被災地では、お風呂以外の生活支援でも女性隊員はある程度の数が必要だと思います。
以前、東北地方で勤務をされていたある女性の高級幹部自衛官の方が「被災者の半数は女性。だったら被災者を支援する自衛官も半数が女性であったほうが良い」と言われていたのですが、なるほどそう考えるとそうだよな~と思いました。
まあ、「被災者を支援する自衛官の半数が女性」はなかなか現実的ではないでしょうけど……。

あと、女湯以外でも、女子トイレや女子更衣室など、女性隊員にしか入れない場所は意外とありますね。
有事でも災害時でも、緊急な場合には男性隊員が入らざるを得ないこともあると思いますが、緊急ではない状況で、「ここに爆弾仕掛けられてないかな~」とさくっとチェックに行くようなときは女性隊員しか入れません。

そう考えると、女性隊員は「抑止力」のためにも必要なのかな。
ある部隊がどこかのエリアの「ここに爆弾仕掛けられてないかな~」チェックを担当していたとして、その部隊に女性隊員(臨時勤務も含めて)が一人も配置されていないことをヨコシマな組織が知ったら、「じゃあプールの女子更衣室に爆弾仕掛けたら発見されないんじゃね?」とか思わせちゃいそうだし。

……と、「自衛隊の仕事で、これは女性じゃなきゃ無理だ」を考えてみたんですが……このくらいかな?
音楽隊とか広報とか接遇とか、「女性じゃなきゃ無理だ」というより「女性もいた方が良くね?」なお仕事はいろいろありそうですね。
「女性じゃなきゃ無理だ」なお仕事……他にもなにかあるでしょうか。

となると、後は、
・男性じゃなきゃ無理だ
・男性でも女性でもOKだ
なお仕事となります。

このうち、「男性でも女性でもOKだ」なお仕事の場合。
自衛隊は、戦闘を伴う「国防」を担う組織であるため、「男性でも女性でもOKだ」なお仕事は、「男性を採用するべきだ」とお考えの方も多いと思います。
「男性でも女性でもOKなら、女性よりも男性の方が良い」と。
「男女雇用機会均等法とか男女平等とかいろいろあるけど、それは他の組織の場合。自衛隊の仕事は、例外を除いてすべて男性がやるべき」というご意見は、私もよく聞きます。
そして、「その通りだなあ」と思います。

じゃあ、なぜ防衛省は女性自衛官を増やそうとしているのか。
なぜ、自衛隊により多くの女性が必要なのか。

それは、単純に「若者が減ってるから」じゃないでしょうか。

20歳前後の若者がすげーたくさんいるなら、「自衛官は例外を除きすべて男性」でもやっていけると思うんです。
22万の自衛官を男性だけでも確保できると思うんです。
でも現在、それは無理なお話です。

今はどの企業でも「優秀な若者の取り合い」です。
若者の数が減ってますからね。
減ってるのに、以前と同じ人数を維持しようと思えば、さらに「できるだけ優秀な人材を」となれば、そりゃ取り合いになります。

そしてそれは自衛隊も例外ではありません。
「優秀な若者に入隊してもらおう」と募集担当の自衛官さんはみなさんご苦労をされています。
企業も自衛隊も、どこも大変です。

「自衛隊が募集に苦労している」ことで「安保法制の影響ガー戦争ガー」なご意見もありましたが……自衛隊だけじゃないですからね。苦労してるのは。
そういえば、去年の今頃は「防大卒業者の任官拒否が増えた!安保法制の影響ガー戦争ガー」とメディアでわーわー騒いでましたが、今年はとんと聞きませんね。
別に安保法制は消えてなくなったワケじゃないのに。
というか、去年「防大卒業者の任官拒否が増えた」のはある前向きな事情があって、安保法制はまったく関係なくて……という話を関係者からお聞きしたんですが、話が逸れまくるのでこれはまた後日。
(もしこの関係者さんからOKがもらえたら書くかもしれませんが、場合によっては私の心のウチに秘めておきます)

話を戻します。

若者が減っている現状、優秀な若者に入隊して欲しい……となると、「自衛隊に入りたい男性」だけでは頭打ちなんです。
「自衛隊に入りたい女性」をもっと採用しなきゃなんです。

女性が6%弱の自衛隊は、女性の募集人数がとっても少なくて、毎年とっても優秀な女の子が自衛隊を受験するも不採用となっています。
「ええ?!こんな優秀な子が不採用なの?!」は、もう慣れ過ぎて最近は驚かなくなってきました。

単純に、「もったいない」と思います。
私よりも、募集担当者さんたちのほうが「もったいない」を痛切に感じていらっしゃるのではないでしょうか。

となると、「男性でも女性でもOKだ」なお仕事を担当する女性の数は、当然増やした方が良いですよね。
女性をもっとたくさん採用した方がいいですよね。
もちろん、「男性でも女性でもOKだ」なお仕事が女性ばっかりとなると、それはそれで成り立たなくなるでしょうけど。

……などなどの事情を考慮して、「現在6%弱の女性の割合を、2030年までに9%に」という目標なんじゃないかなーと思います。
この「9%」という数字、キリのいい「10%」ではなく「9%」という数字に、目標を設定したご担当者さんの思慮とご苦労が伺えるような気がします。

私は女性で、予備自衛官をやっています。
ライターとして、全国各地の自衛隊の部隊を取材しています。

いろんな「自衛隊」を知れば知るほど、「やっぱ自衛隊は基本男性がやるもんだな」と思います。
これが、正直なところです。

「自衛官になりたい!」というたくさんの女の子たちの夢は叶って欲しいのですが、「日本の平和と安全」「国民を守る」ことを考えれば、「やっぱ自衛隊は基本男性がやるもんだな」と思います。

でも、現状はそうはいきません。
いろんな背景があり、自衛隊に女性も必要なのが現実です。

もっとたくさんの男の子たちが「自衛官」を将来の道として考えてくれるようになれば、少しは変わってくるのかな。

できれば、「優秀な男の子がたくさん予備自衛官に志願してるから、岡田はもう任期更新しないよ」と自衛隊さんに言われるくらいになればいいな~と……まあそれはそれでとっても悲しいんですが、でも日本のことを考えたらそっちの方がいいですしね。

ということで……そこの若者!
将来「自衛官」ってどうよ??
「予備自衛官」って手もあるよ!!


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―岡田真理―
フリーライター。昭和52年生まれ、福岡県香春町出身。同志社大学工学部中退。平成17年、陸上自衛隊予備自衛官補(一般)に志願。50日間の教育訓練を経て、平成19年、予備自衛官に任官。現在も任用継続中。全国の陸海空自衛隊各部隊を取材し、「女子高生にも分かる国防」をモットーに執筆活動を行う。

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