■2015年09月

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■自衛隊海外派遣のお勉強~「ソマリア沖の海賊対処活動」編 その1

集団的自衛権、安全保障法制関連では、「自衛隊の海外派遣」の話題がよく出てきます。
最近では、「ホルムズ海峡の機雷の除去」という言葉もちょいちょい聞きますよね。

「自衛隊が海外に派遣されてる」ことは、ほとんどの方がご存知だと思いますが、「で、実際なにやってんの?」という方も多いのではないでしょうか。

今回は、この「自衛隊の海外派遣」についてのお勉強です。
あ、「お勉強」といっても別に必死こいてあれこれ覚える必要はありませんので(覚えるに越したことはありませんが)、へーへーほーほーと軽い気持ちで読んでもらえればそれで充分です。

自衛隊は、海外のさまざまな場所でさまざまな活動をしていますが、今回は「ホルムズ海峡の機雷の除去」にもつながる、海の安全を守る活動、「ソマリア沖の海賊対処活動」のお話をします。

「ソマリア沖の海賊対処活動」……この言葉は、ニュースなんかで一度は耳にしたことがあるんじゃないでしょうか。
これは、ざっくりいうと「海賊から船を守る」という活動です。

アフリカ大陸と西アジアの間には「アデン湾」があります。
アデン湾は、ヨーロッパとアジアを結んでいる、世界的に重要な海上輸送ルートです。
世界各国の船が、この海域を通って石油や輸出入品などのたくさんの物や人を運んでいます。

しかし近年、このアデン湾で困ったことが起きるようになりました。
「ソマリアの海賊」です。

ソマリアは内戦などで混乱状態にある国で、アデン湾のソマリア沖を航行する船を襲撃してお金を稼ごうとする「海賊」が出始めました。
海賊は、漁船などに乗ってソマリア沖を航行する船に近づき、ライフルや機関銃、ロケット弾といった武器で攻撃します。
そして、船に乗っている人を拘束して、数百万ドルの身代金を要求。
解放のための交渉が実らず、人質が殺害されることもあります。

アデン湾には、たくさんの日本の船もいます。
日本は、資源を輸入し、製品を輸出することで成り立っている国です。
海賊がいたら、日本に石油を運ぶ船が通れません。
日本に石油が入って来なくなったらガソリンがなくなりますし、石油製品も電気もガスも作れなくなります。
私たちの身の回りにある物は、そのほとんどが製造や輸送で燃料を使っています。
欲しい物、必要な日用品が手に入らなくなってしまいます。

輸出も同様です。
日本はたくさんの製品を輸出していますが、それができなくなれば日本経済はどえらいことになってしまいます。
すると、たくさんの会社が倒産したり、たくさんの人が失業することにもなります。
日本は立ち行かなくなってしまいます。

この「ソマリアの海賊」は、日本の、そして世界の脅威となりました。
そこで、各国はそれぞれの軍を派遣して、海賊から船を守る活動を始めました。
ライフルや機関銃、ロケット弾なんて物騒なモノを出されたら、もう対処できるのはミリタリーしかありません。
そして日本も、2009年から自衛隊を派遣して、この「海賊対処活動」に参加しました。

自衛隊はアデン湾の海と空で、海賊対処活動をしています。
海では護衛艦、そして空では飛行機。

物や人を運ぶためにアデン湾を航行する船は、海賊からの襲撃を防ぐために、ちょっと変わった方法を取ります。
海賊なんかの脅威がない海域では、一隻ずつ航行しても問題ないんですが、アデン湾を通るときには数隻ずつの「船団」を組みます。
アデン湾の入り口あたりに着いたら、他の船がやってくるのを待って、数隻が集まったら「船団」を組んで出発。
そして、各国軍の艦船や自衛隊の護衛艦が「海賊っぽい船はいないかな?」と警戒しながら船団をエスコートし、みんなで一緒にアデン湾を進んで行きます。
護衛艦にはヘリコプターも乗っていて、必要なときには甲板から離陸し、周囲を空から警戒します。

飛行機も、空から警戒するために飛んでいます。
自衛隊が派遣している飛行機は、海上自衛隊の「P-3C」という機です。

「P-3C」の「P」は「patrol(パトロール)」の頭文字。
警察の車を「パトロール・カー(パトカー)」と言いますが、P-3Cはいわば「パトロール・プレーン」です。

P-3Cはそもそも、日本周辺の海上を警戒・監視するための飛行機です。
怪しい船はいないかな?怪しい潜水艦はいないかな?と日本周辺の海上を飛んでいる飛行機。
赤外線やレーダー、「ソナー」と呼ばれる音波探知機なんかを使って、海上や海中を監視します。
もちろん、双眼鏡を使って「目で見る」こともしますし、「なんかあれ怪しくね?」と思えば写真を撮ってコンピューターで解析したりします。
P-3Cは、「警戒・監視」に長けたハイテク飛行機です。

アデン湾では、そんなP-3Cの能力を活用して、「海賊の警戒・監視」をしています。
ハイテク機器で「あれ?海賊かな?」を見つけると、その情報を護衛艦や各国軍、船団に伝え(正確には、各国で結成している連合部隊「CTF151」というところに伝え、そこからいろんなところに伝達)、海賊からの襲撃を防ぎ、海の安全を守ります。

自衛隊の「海賊対処活動」は、ざっくりこんな感じです。

ここで、実際に起きた事例をご紹介します。
昨年、2014年のできごとです。

海上自衛隊の護衛艦「さみだれ」が、いつものように船団をエスコートしながらアデン湾を航行していると、CTF151から
「あなたの船団の近くに、船団に加わらず単独で航行しているXXという船がいる。XX船から『不審な船がいるから助けて欲しい』とSOSが来ている」
と情報が入りました。

そこで、護衛艦「さみだれ」からヘリが発進。
「さみだれ」は船団のエスコートを続けたまま、ヘリがXX船を探すことになりました。
しばらく飛行していると、情報通り単独で航行しているXX船を発見しました。
そして、P-3Cに「ここにいるよ」と位置情報を連絡。
P-3Cが飛んできたら、監視をバトンタッチ。
ヘリは「さみだれ」に戻りました。

バトンタッチされたP-3Cは、XX船の周りを飛び続けました。
クルーがXX船をよくよく監視すると、ごく普通の貨物船のようです。
しかしP-3Cは、「このXX船には海賊がいるかもしれない」と、攻撃されないような高度で監視飛行を続けました。
そして、近くを航行しているフランス海軍の艦「シロコ」にXX船の情報を伝え、「シロコ」がやって来ると現場を引き継ぎました。

「シロコ」からは、ヘリと乗船部隊がXX船に向かいました。
すると、XX船には海賊が。
XXはインドの貨物船で、アデン湾を航行中に海賊に乗っ取られ、XX船の乗員が人質となっていました。
「シロコ」の部隊は海賊を拘束。
そして、人質となっていたXX船の乗員も、無事解放されました。

実はこの海賊たち、前日に別の石油タンカーを攻撃していました。
石油タンカーには民間の警備組織が乗っていたため、応戦して難を逃れたのですが、海賊は逃げたままでした。

しかし翌日、自衛隊の護衛艦とP-3C、そしてフランス海軍との連携で、海賊を拘束。
一件落着となりました。

海賊がソマリア沖に出没し始めたのは、2005年頃だといわれています。
その後、各国軍が海賊対処活動を始め、自衛隊も2009年から参加し、航行する船が襲撃される件数は減少しました。
が、身代金で一攫千金を狙う海賊は後を絶たず、各国軍・自衛隊が活動を辞めればまた襲撃事件がたくさん起きるようになってしまうため、まだこの活動は続けなければなりません。

海賊がいなくなってくれれば、自衛隊の派遣隊員も、各国の軍人さんも、あんな暑いとこでお仕事しなくて済むんですが……。
母国で家族と一緒に暮らすことができるんですが……。

余談ですが、この自衛隊の海賊対処派遣に、反対している人たちがいます。
そのうちのひとつが、「ピースボート」。

以前、この「ピースボート」がアデン湾を航行するときに、自衛隊の護衛艦がエスコートする船団に入ったことがありました。
そして、このことが報道されると、
「派遣に反対してるのに、なに自衛隊に守られてんだ」
「反対しているのなら、自衛隊を頼るな」
といった批判が起きました。

でも私は、ピースボートがちゃんと護衛艦の船団に入ってくれて良かったと思っています。
前述のインドの貨物船は、船団に入っていなかったことで、海賊の襲撃を受けました。
(なぜこの貨物船が船団に入らなかったのかは不明ですが……。よっぽど急いでたんでしょうか。分かりません)

もし、ピースボートがこの貨物船のように船団に入っていなかったら、海賊の襲撃を受け、乗員や乗客に被害が出ていたかもしれません。
命に関わる事態が起きていたかもしれません。
そんなことにならないよう、ちゃんと船団に入ってくれて、そして無事航行できて本当に良かったと思っています。

そしてもひとつ余談。
2009年に「海賊対処活動に自衛隊が参加しよう」となったとき、民主党はその法案に反対していました。
しかし、法案は成立。
自衛隊は海賊対処活動に参加することになり、護衛艦とP-3Cの派遣が開始されました。
そしてその後、政権は民主党に。
民主党が反対していたことなので、この派遣が止まってしまうんじゃないか……と内心不安だったのですが、当時の政府は自衛隊の派遣をそのまま継続しました。
反対を改めて、海賊対処活動の重要性を理解された当時の政府関係者のみなさまに、本当に感謝しています。

私は、「日本の安全保障」はもちろんのこと、世界中の海でお仕事をされている方々の安全、そのご家族のみなさんの安心を、しっかりと確保できる状態であって欲しいと思っています。
そして、海賊対処活動を行っている、自衛官のみなさんの安全も。

今、このときも自衛隊の護衛艦やP-3Cは、日本から遠く離れたアデン湾で海賊対処活動をしています。
日本からはとても遠いところですが、でも日本の経済や私たちの日々の暮らしに直結する脅威から、日本や世界を守るために、今、このときもがんばっています。
自衛隊の海賊対処活動は世界から高い評価を得ていて、日本や世界の船舶会社からも「エスコートありがとう」とお礼の手紙がたくさん届いています。

「で、実際なにやってんの?」と言われがちな自衛隊の海外派遣ですが、「へー、そんなことやってんだ」が少しでもたくさんの方々に届いてもらえると、とても嬉しいです。

さて、護衛艦とP-3Cが派遣されている、アデン湾・ソマリア沖。
護衛艦とP-3Cが派遣されているということは、そのためのスタッフである隊員さんたちもたくさん派遣されています。
護衛艦スタッフの隊員さんたちは、約400人。
P-3Cスタッフの隊員さんたちは、約70人。
そして、これらの活動をサポートする隊員さんたちが、約110人。
(自衛官には、海賊を拘束したり移送したりするための「司法警察権」がないため、8人の海上保安官さんも護衛艦スタッフとして派遣されています)

護衛艦スタッフの隊員さんたちは、護衛艦の中で生活しています。
護衛艦には食堂や寝室、医務室なんかがあって、何不自由なく……とはいきませんが、最低限の生活を送ることができます。

しかし、P-3Cはそうはいきません。
P-3Cの中に生活スペースはありませんし、飛行機なので着陸をしなければなりません。
そのための飛行場や格納庫、そして整備をする場所が必要です。
スタッフやサポートする隊員さんたちが、お仕事をしたり生活を送る場所が必要です。

その「拠点」があるのが、ソマリアのお隣、「ジブチ共和国」です。
私が2年前に飛んで行って、ひーひー言いながらも楽しく過ごした「ジブチ共和国」です。

……と、今日はここまで。
続きはまた来週!


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プロフィール

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Author:okadamari

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岡田真理・著
(文藝春秋社)


よくわかる自衛隊 (楽しい調べ学習シリーズ)



志方俊之・監修
岡田真理・文
(PHP研究所)



―岡田真理―
フリーライター。昭和52年生まれ、福岡県香春町出身。同志社大学工学部中退。平成17年、陸上自衛隊予備自衛官補(一般)に志願。50日間の教育訓練を経て、平成19年、予備自衛官に任官。現在も任用継続中。全国の陸海空自衛隊各部隊を取材し、「女子高生にも分かる国防」をモットーに執筆活動を行う。

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