■【質問】予備自衛官は現役教師には不可能ですか?

■【質問】予備自衛官は現役教師には不可能ですか?

※文中に出てくる数字に関しては、最後に追記があります。


【質問】
私も小・中学校の教員を目指して教育系の大学に通う1年生です。
取らぬ狸…なのですが、仮に予備自衛官となることが出来たとき、年間5日の訓練を受け続けるのはやはり、現役教師には不可能なのでしょうか。
というのは、当然受け持ちのクラスをほっぽって
「訓練いってき☆」はできないと思うので、長期休業など、ある程度の日時の選択使はないものか、という意味です。

また根本的に
子どもたちを置いて緊急時は出動するよ!というスタンスの教員ってやはりよろしくないですよね?


【回答】
訓練は大丈夫なんじゃないでしょうか?

予備自衛官の訓練は、「○月○日~○月○日に訓練やるから来てね」という期間が年度内に数回設定されています。
予備自衛官は社会人(一部学生)なので、連休を中心に訓練が設定されてることも多いです。

ので、夏休みの時期に設定されてる訓練に参加、とかで。
部活の顧問などをされてたら、先生もなかなか休暇を取り辛いと思いますが、年5日間はなんとかなりそうな……。
学校にもよると思いますが、休暇が取れれば大丈夫なんじゃないでしょうか。

で、「訓練」ではなく、「実働」の招集の場合。
予備自衛官は「訓練招集」以外に、
・防衛招集
・国民保護等招集
・災害招集
の3つに応招義務があります。

東日本大震災で初めて予備自衛官が実働招集されましたが、このときは「災害招集」でした。
この災害招集で、実際に出頭した予備自衛官は以下の記事によると103人とのこと。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120703-OYT1T00465.htm
より一部抜粋します。

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「予備自衛官の見直し必要、震災出頭103人だけ」

財務省は3日、2012年度予算の無駄遣いを点検する予算執行調査の結果を発表した。

-中略-

見直し対象には、防衛省の予備自衛官制度(予算額80億4900万円)も挙がった。有事に駐屯地の警備などの後方任務に当たる非常勤の予備自衛官のうち、東日本大震災で出頭可能と回答した人は4497人と全体の17・1%にとどまり、実際に出頭できたのは103人だけだった。このため、震災などの際に有効に活用できるよう、制度を見直すべきだとした。

(2012年7月3日12時26分 読売新聞)
------------------------------------------------

これ、裏を返せば「出頭可能」と回答した4497人の予備自衛官のうち、今回は103人しか必要なかったということだと思うんですよ。
あ、もちろん今後のために制度として現状でいいのかどうかは常に見直されていくとは思いますが。

記事には「実際に出頭できたのは103人だけだった」という書き方がされてますが、「出頭可能」と回答した4497人のうち実際に派遣されなかった4497-103=4394人は、「可能と言っときながら出頭できなかった」わけではなく、呼ばれなかったんです。
私もこの4497-103=4394人のうちのひとりです。
「出頭できます」と答えて、いつ招集が来てもいいように準備しつつ待機してたら予備自衛官の派遣が終了。

災害は局地的に起こるので、災害派遣で必要とされる予備自衛官は、その全員ではないと思います。
(ひょっとしたら日本全土が……という災害が今後起こる可能性もゼロではないかもしれませんが)

ので、災害時に予備自衛官の全員が全員出頭できなくても大丈夫なんじゃないでしょうか。
……という言い方はものすごく語弊があるな。

もちろん、「いつでもどこでもどんな状況でも行けます!!」という人のみで予備自衛官が構成されるのが一番いいんですが。
でも、「いつでもどこでもどんな状況でも行けます!!」って人だけしか予備自衛官になっちゃダメって言ってたら、数足りなくなるのは目に見えてますし。

災害が起これば、災害時だからこそ援助、復興のためにいつも以上にお仕事やらなきゃ、な方もたくさんいるでしょうし。

「いつでもどこでもどんな状況でも行けます!!」って人数を常時確保するためには、現職の自衛官を増やすのが一番なんですが、予算の関係上そう簡単にはいかないですし。

で、一方「防衛招集」と「国民保護等招集」。
これは日本が武力攻撃やテロを受けたとき(受ける危険があるとき)の招集です。

もし、予備自衛官が防衛招集や国民保護等招集をされるような事態が起こったら……とりあえず学校は休校になるような気がします。

企業も、平常通りの活動はできなくなると思います。
社会人をやってる予備自衛官も、普段の社会人としての業務自体がストップすれば招集に応じられるんじゃないでしょうか。
あまりに長期になってしまったら別かもしれませんが。

武力攻撃やテロが日本のどの範囲、どのくらいの範囲で起こるかにもよりますが、そしてその被害や対処がどのくらいの規模になるのかにもよりますが、

○範囲や規模が大きい場合
・多数の予備自衛官が必要
・通常の社会業務が全体的にストップ→招集に応じられる予備自衛官の数も多

○範囲や規模が小さい場合
・少数の予備自衛官が必要
・通常の社会業務が部分的にストップ→招集に応じられる予備自衛官の数も少
 (仮にストップしなくてもある程度の数は確保できそうな……)

と、数の上では回るんじゃないかと思います。

そして、これを「数の上」だけで終わらせないためにも、私は「予備自衛官の社会人としての業種はバラけてたほうがいい」と思っています。

今の日本で紛争や戦争、テロが起きてしまったらどうなるのか、交通、販売、流通、輸送、製造、電気ガス水道……などなどがどうなっちゃうのかは分かりません。

鉄道や航空を狙ったテロが起これば、当然その業務に就いている予備自衛官は招集よりも業務を優先する必要があるでしょうし、武力攻撃でライフラインが途絶えてしまえば、その関係者はそちらの業務に専念しなければなりません。

そのときの状況でどんな人や技術が特別に必要とされるのかが分からない以上、どんな職業や立場の人が予備自衛官として招集に応じられなくなってしまうかが分からない以上は、予備自衛官の業種に偏りがない方がいいと思っています。

まあ、もちろん予備自衛官全員が「いつでもどこでもどんな状況でも行けます!!」であることが一番いいんですけどね。
日々責任を持って業務にあたっている社会人が予備自衛官やってる以上は、そうは行かないので。

なので、「教師だから予備自衛官はダメ!」とか「この職業は予備自衛官はダメ!」とかは、国や国民から見ればないほうがいいんじゃないかなーと思います。
企業の立場から見るとまた別だったりするんでしょうけど。
ま、そこは地道に理解を得ていくしかないんでしょうね。

先生が、「子どもたちを置いて緊急時は出動するよ!」だと親御さんにとってみれば「おいおいおいおい」かもしれませんが、でも東日本大震災では我が子を置いて招集に応じたママさん予備自衛官の方も実際にいらっしゃいました。
お子さんを、親戚や近所の方に預けて。
一方、預け先がどうしても見つからなくて招集に応じられなかった方もおそらくいらっしゃるのではと思います。
子育て中の方だけでなく、他の予備自衛官の方でも、どうしても業務に専念しなければならない事情があり、断腸の思いで招集に応じられなかった方もいらっしゃると思います。

なにを優先してどう選択をすべきか……は、そのときの非常事態になってみないと分からないことですが、いろんなパターンを考えながら、万が一に備えていくしかないんでしょうね。
今できることは。

ちなみに、「戦争が起こって予備自衛官招集」というと、「ミサイルドーン! わー! 取るものも取り敢えず出頭!」なイメージをされる方も多いんですが、そんなことはありません。

武力攻撃を受けて、自衛隊が防衛出動することになりました→必要と判断されて、予備自衛官も防衛招集することになりました→出頭日や期間の調整→出頭命令書を本人に届けて……→出頭
という手順を踏みます。

なので、万が一学校の近くに突如ミサイルを落とされるようなことがあっても、即座に子供たちを見捨てなければならないようなことにはなりません。
他のお仕事でも同じく。

ちゃんと準備しないと出頭もできませんしね。
業務の引き継ぎの準備も、出頭に必要な装備品の準備も。


※追記
上記の読売新聞の記事では、
「東日本大震災で実際に出頭した予備自衛官は103人」
とありますが、平成24年度版の防衛白書を見ると、
・即応予備自衛官:のべ2210人(実人数1374人)
・予備自衛官:のべ496人(実人数317人)
と書いてありました。
103人って何の数字なんだろう??

また、記事には
「出頭可能と回答した人は4497人と全体の17.1%にとどまり」
とありますが、防衛省の資料では、
「出頭調整の当初段階においては、予備自衛官の約2割、即応予備自衛官の約4割が出頭可能との表明であったが、最終的にはいずれも招集の打診に対して約7割が応招」
とのこと。
(「平成23年度中間段階の事業評価」の「予備自衛官等制度における信頼性の向上(大規模・特殊災害等に対応するための基盤強化及び予備自衛官室の新設)」より)

細かく書くと、私の場合は、震災発生の翌日早朝(地震発生から約19時間後)に「もし招集があった場合には出頭できますか」と電話があり、「出頭できます」と答えました。
この時点では、まだ予備自衛官の招集命令は出されていません。
(招集命令が出されたのは、震災発生から5日後の3月16日。「招集を検討」というニュースが流れたのが14日)

予備自衛官同士の間でも、「電話来た?」というメールやSNSメッセージが飛び交っていましたが、私と同じ時期に電話を受けた人や、招集命令が出されてから電話を受けた人、1週間経ってからやっと電話ができた人などさまざまでした。

そら予備自のみなさんもじっと電話握って待ち構えてるわけにはいかないですからね。
仕事中だったり、非常時の徹夜仕事明けの仮眠中だったりで電話が取れないこともありますし、ご自身やご家族が被災された予備自衛官の方もたくさんいて。
招集する側の担当者も、多忙の中、えらい人数に電話確認しなきゃいけないから、ひとりに何度も何度も掛け続けるわけにはいかないですし。

〝2011年3月14日10時55分 読売新聞〟の配信では、
「予備自衛官約4600人が参加の意向を示している」
とあります。

上記記事(2012年7月3日12時26分 読売新聞)の
「出頭可能と回答した人は4497人と全体の17.1%」
は、どのタイミングでの数字か分かりませんが、少なくとも14日の時点で「約4600人」、そしてその後の確認で人数が増え、最終的に「約7割」ということなんだと思います。

言い訳っぽくグダグダ書いちゃいましたが、不正確な数字が広まったままでは悲しいので……。
「出頭可能と回答した人は4497人と全体の17.1%」
を受けて、予備自衛官制度の在り方を見直す的な記事やブログもたくさん見たので……。

記事はちゃんと正確に。
他山の石とします。


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―岡田真理―
フリーライター。昭和52年生まれ、福岡県香春町出身。同志社大学工学部中退。平成17年、陸上自衛隊予備自衛官補(一般)に志願。50日間の教育訓練を経て、平成19年、予備自衛官に任官。現在も任用継続中。全国の陸海空自衛隊各部隊を取材し、「女子高生にも分かる国防」をモットーに執筆活動を行う。

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