■人を助け、命を救う人たちの顔

■人を助け、命を救う人たちの顔

今日こそは「日本唯一の機甲師団」シリーズの続きを……と思ってたんですが、今回も別のおはなしです。

先日、友人とごはんを食べていたときのこと。
激務な友人でなかなか会えずにいたんですが、当日の昼に「今夜時間作れる!どう?」ってことで。

「久しぶり~」とお互いの近況を話したりしながら2時間弱。
急に、友人が「あ、きた」とテーブルに突っ伏しました。

友人はお酒に強いタイプなんですが、このときはサワーを1杯飲んだだけ。
ので、酔っぱらって……というワケではなく、貧血です。
友人は血圧が低く、以前にもこういうことがあったので、私も「おお、大丈夫?気にしないでゆっくりしてね」と様子を見ながらひとりでビールを飲んでいました。

しばらく休んで回復した友人は「トイレ行って来る」と離席。
しかしトイレには先客さんがいたようですぐに戻り、「それでさ~」「えー、そうなの?」と話の続きをしてると先客さんが出て、再びトイレへ。
ちょうど仕事のメールが来たのでスマホを見ながら友人を待っていたら……背後でバターン!「キャー!」「大丈夫ですか?!」。
振り返ると、トイレを出た友人が床にぶっ倒れていました。

「わ、まだ貧血おさまってなかったか?!」
慌てて駆け寄り、うつ伏せで倒れてる友人に「大丈夫?」と声をかけて体を起こすと、ボタボタ流血。
「鼻血?鼻打った?骨やった?」と鼻を見るも異常なし。
「どこだ……?」と流血をたどると、アゴがぱっくり。

えーと、だいぶ深いなこれ……奥に見えてる白いのはこれ……脂肪じゃないよね、これ骨だよね……。

頭に「救急車」という単語が浮かびますが、一方で「救急車を呼ぶ必要がない不適切な119番通報」というのも頭によぎります。

どうする?
タクシーで病院に運ぶか?
いやでもこの出血量はタクシーにご迷惑かかるぞ?
それに友人を私ひとりで運べるか?
いくら小柄で細い子だからって、彼女背負って二人分の荷物持って運べるか?
背負った状態で安全に運べるか?
出血がこのまま続けば結構な量になるぞ?

ぱっくりの深さを見ながら一瞬で頭の中をいろんなことがぐるぐる回りましたが、店員さんを呼び止めました。
「ほんとすみません!救急車お願いします!」

店員さんはすぐ119番してくれて、他の店員さんもおしぼりペーパーを大量に持って来てくれました。
「ありがとうございます」と、とりあえず止血……この場合はどこの血管押さえればいいんだ?
えーっと、切れてるのはアゴだから……首の血管?
いや、頭に行く血を止めちゃダメだよな……。
これは患部を押さえる「直接圧迫」でいいよな……。

おしぼりペーパーを重ね、ぱっくり部分に押し当てていると友人が顔をしかめました。

「痛い?どこが痛いか言える?」
「あほ……」

アゴを強打してるので「アゴ」が「あほ」になってますが、意識は戻ったようで少し安心です。

ほどなく救急車が到着。
てきぱきと丁寧に動く隊員さんたちを見て、心がとても落ち着きました。

タンカに乗せられてベルトで固定される友人。
この間にお会計を済ませ、血がダラダラのお店の床を拭き、店員さんとお客さんに平謝り。

「お騒がせしました。本当に申し訳ありません」
「いえいえ、大丈夫ですよ」

店員さんもお客さんたちも、みんないい人ばかりでした。
本当にすみませんでした。
お気遣いありがとうございました。

私も救急車に乗り込み、病院へ。
ピーポーピーポー走ってるときに道を譲ってくれる車や歩行者がとてもありがたかったです。

病院に到着。
友人はすぐに処置室へ。

夜の救急外来には外人さんの先客がいました。
外人さんは腕の関節部分があり得ない出っ張り方をしていて、くすんくすんと子供のように泣いていました。
とてもガタイの良い大柄な外人さんがくすんくすんと子供のように泣いてるのを初めて見ました。
まあ、見るからに痛そうなのでしょうがないんですが。

かと思えば、外人さんは電話で「I told you!! I told you!!」と誰かとケンカを始め、病院のスタッフさんに「すみませんがお電話は外で……」と怒られていました。
「oh……スミマセン」と素直に電話を切ってました。

友人の搬送を終え、事務的な手続きも終えた救急隊員さんたち。
「本当にありがとうございました。お手数をお掛け致しました」
と、お一人おひとりに頭を下げると、みなさん一様に笑顔で
「いえ、お大事になさってください」。

ああ、この笑顔、見たことあるぞ。
私がいつも関わってるあの組織の人たちと同じだ。
人を助け、命を救う人たちの顔だ。
相手を気遣い、でも相手には気遣わせない独特の笑顔だ。
頼もしく、心強い笑顔だ。

消防も、自衛隊も、人の命を預かる方々には共通する「顔」があるようです。

さて、友人はアゴの裂傷だけでなく、アゴの骨が2か所やっかいに折れていました。
骨折までは見た目じゃ分からなかったけど……救急車来てもらって正解だったなぁ。
私が運んでたら骨が余計にやっかいになってたかもしれません。

キズの縫合、そしてなかなかグロいアゴの骨の固定の処置を終えた友人。
(口腔外科の待合室が夜中で真っ暗だったので、処置室で見てましたが……なかなかエラいことになってました)

まだ貧血でふらふらする友人をタクシーで家まで送り、自宅に帰ると空はすっかり朝でした。

……ということで、今回の反省。

なんであのとき、友人がお店でトイレに行ったときに付き添わなかったんだろう。
普通に話せるくらい回復してたとはいえ、まだ完全には治ってはいない可能性はいくらでもあるんだから付き添うべきだったのに。
なんでそのくらいのことを思いつかなかったんだろう。
私が付き添っていれば、友人はケガもせずに痛い思いもせずに済んだのに。
お店のスタッフさんにもお客さんにも、救急隊員さんにも病院にもご迷惑かけずに済んだのに。

今後は、少しでも体調悪い人がいたら、万が一を考えて、離れずにいようと思います。

そして応急救護をもっと勉強したいと思いました。
予備自衛官で訓練やってるとはいえ、やはり年1回のこと。
以前から消防で救命講習を受けたいな~とぼんやり思っていましたが、ちゃっちゃと申し込もうと思います。

そして、改めて「訓練しっかりしないとな」と。
私は元々、「なにか」が起きたときにオロオロオロオロするばかりでまったく使えない人間でした。
なにもできないクセにひとり勝手にテンパって、使えないどころかただただ邪魔になる人間でした。

でも今回、ケガを防げなかったことを友人に謝ると
「真理ちゃんがいてくれてどんなに心強かったか。真理ちゃんだから甘えてたんだよ。なにも考えずに安心して寝てられたんだよ。こんなに恵まれた患者はいないよ」
と言ってくれました。

自分でも、今回は以前のようにオロオロすることなく、冷静に対処できたように思います。
自衛隊で訓練やるうちに、いつの間にかちょっとはたくましくなったのかな。
常に人命と向き合っている自衛官さんたちと関わるうちに、私も腹がすわってきたのかな。
ただ歳とって動じないようになっただけかもしれませんが……。

先ほども書きましたが、予備自衛官の訓練では応急救護の教育を受けます。
止血法や心肺蘇生法といった技術ももちろんですが、「自分が『万が一の場』に身を置いたことをリアルに考え、行動する訓練を繰り返す」ことで得られる精神的な強さも身に着けることができてるんだろうな~と、今回の件で思いました。

部隊によっては結構リアルな訓練やるんですよ。
患者役が「痛ぇんだよ!!早くしろよ!!」と怒鳴って暴れてくれたり。
暴れる患者役に声掛けて押さえながら止血してたら、別の人が耳元で「敵が来たぞバンバンバンバンバーン!!!」ってご丁寧に銃声まで怒鳴ってくれたり。
そうなるとこっちも撃たれるので、伏せながら止血したり。
あんまり詳しく書けませんが……。

想像力豊かになります。
いろんな「リアル」を考えて動くようになります。

これからの訓練は、もっとしっかりがんばろう。
もっともっとしっかり「リアル」に対峙して、どんなときでもやるべきことをやれるようになろう。

以前よりはマシになりましたが、まだまだ知らないこと、できないこと山積みです。
「人を助け、命を救う人たちの顔」に少しでも近づけるよう、ひとつずつしっかりがんばっていきます。

あと、反省として付け加えるなら「お酒はほどほどに」ですかね。
友人はお酒の影響まったくありませんでしたが、私はビール3杯飲んじゃってましたから……。
私もお酒は強い方なので、ビール3杯くらいで頭が回んなくなるようなことはないですが、あのとき「そろそろ日本酒に変えようかな~」と思ってたところだったんですよ。
ビール3杯の後に日本酒2杯とかいっちゃってたら、頭はしっかりしてなかっただろうなぁ。
友人、倒れたのが日本酒飲む前で不幸中の幸いでした。

考えてみれば、こういう事故じゃなくても、地震なんかもいつやってくるか分かりませんしね。
頭回んないときにでかい地震が来たら大変だ。
常に気を張ってるとそれはそれで……なので、適度にリラックスもしなきゃですが、いろんなことを頭に入れて生活しようと思います。

さて、友人の経過は順調です。
先日は通院帰りにお店まで菓子折り持って謝りに行って来たとのこと。
なんだよ~誘ってよ~私もごめんなさいしたかったのに。
お店の人は「治ったらまた来てください!サービスしますんで!」と言ってくださったそうなんですが……なんのサービスだ……。
完治したらまた一緒に行きたいと思っています。
酒量はほどほどで。

とはいえ、まだ完治にはほど遠く、友人は来週手術です。
友人はご家族がご病気をされてるので、手術には私が付き添います。
「麻酔から覚めるとき、私は一晩中吐いたよ~。キツイよ~」と脅したら、「ゲロの世話も下の世話もヨロピク♪」と返ってきました。

……ということで、すみませんが来週の更新はお休みさせてください。
「ギリギリまでがんばってみますがお休みするかも」ではなく、現段階から堂々のお休み宣言で申し訳ないですが、気長にお待ち頂けると嬉しいです。


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プロフィール

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岡田真理・著
(文藝春秋社)


よくわかる自衛隊 (楽しい調べ学習シリーズ)



志方俊之・監修
岡田真理・文
(PHP研究所)



―岡田真理―
フリーライター。昭和52年生まれ、福岡県香春町出身。同志社大学工学部中退。平成17年、陸上自衛隊予備自衛官補(一般)に志願。50日間の教育訓練を経て、平成19年、予備自衛官に任官。現在も任用継続中。全国の陸海空自衛隊各部隊を取材し、「女子高生にも分かる国防」をモットーに執筆活動を行う。

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