■任務を考えてシンプルに生きる

■任務を考えてシンプルに生きる

まれに、紛争地域に入ったジャーナリストやカメラマンの方が組織に拘束される……という事件が起こることがあります。

こういうとき、ちょくちょく
「岡田さんも紛争地域に行きたい?」
と聞かれることがあります。

私の答えは、「ノー」です。
日本政府や日本のみなさんにご迷惑を掛けてしまうような危険性がある地域には、行こうとは思っていません。

とはいえ、比較的安全だとされている国や地域でも犯罪に遭う可能性はゼロではありませんし、そうなると私が日本人で日本のパスポートを持っている以上、日本政府のお世話になってしまうのですが……。
まあ、そんなこと言ってたらどこにも行けませんしね。
日本国内だって地下鉄サリン事件のようなテロが起きた事例はありますし、お外に出れば事件や事故に巻き込まれる可能性はありますし、なんだったらお家に閉じこもっていても地震や火事で一秒後にはどうなってるか分かりませんし。

どこでなにしてても、日本政府や自治体、それに準ずる組織にご迷惑を掛けたりお世話になる可能性はあります。

でも、日本政府(外務省)が、「この国、この地域に入るのは危険ですよ」とアナウンスしているところに行くつもりはありません。
もちろん、その場に行って実際に見聞きして、肌身で感じて初めて書けるもの、伝えられるものはあると思います。
そのことには大きな価値があると思います。

でも、私がその場所に行くときは、日本政府から発行された日本のパスポートを持ちその信用で入国したり出国したりするワケなので、日本政府の言うことは聞くべきだと思っています。
別の手段で、伝えたいことを伝える手段を選びます。

そしてなにより、「伝える」ことが目的なのでであれば、拘束されちゃダメだと思うんです。
拘束されたら「伝える」ことができなくなりますから。
「伝える」という「任務」を達成しようと思えば、拘束される危険性は排除しなければなりません。
まあ、運良く開放されるという可能性もゼロではありませんが。

任務のために行動するのなら、その任務が達成できないような危険性は限りなくゼロに近づけなければなりません。

だから、私は紛争地域に行くつもりはありません。

自分の行動を選ぶとき、「任務」を基準にする……このとてもシンプルな考え方は、自衛隊で学びました。

自衛隊は、すべて「任務」に即して動いています。

自衛隊に与えられた任務は「国防」です。
そして
・陸上自衛隊は「領土を守る」
・海上自衛隊は「領海を守る」
・航空自衛隊は「領空を守る」
と任務は細分化していきます。
(土地や海、空だけでなく「国民の生命」とか「国民の財産や文化」とかもありますが、まあざっくりと)

また陸上自衛隊の中でも、
・国土や国民を守るために戦車を運用することを任務とした部隊
・生物化学兵器から国土や国民を守ることを任務とした部隊
・各部隊がスムーズに動けるように通信を任務とする部隊
などさらに細分化されます。

これら各部隊の中でも任務はもっと細かく分けられ、各個人にも「ヘリがちゃんと飛ぶように整備する任務」や「資材を運ぶトラックを運転する任務」とそれぞれに任務があります。

自衛官個人、自衛隊の各部隊は「任務」に即して動いています。

それは、万万が一戦争となったときも同じです。
みんな、「任務」のために行動します。

戦争となれば、自衛官は「死んでナンボ」とか「死んで当たり前」のように思ってる方がちょくちょくいらっしゃるようですが、また戦争は「死にに行くもの」と思ってる方がちょくちょくいらっしゃるようですが、自衛官は死ぬことが任務ではありません。

「○○地域を守る」とか、「占領された○○島を奪還する」とか、そういう「任務」があり、そのための行動をします。
ときにその行動は戦闘となるかもしれませんが、死ぬため、殺すために戦闘をするわけではありません。
「任務」を達成するために行動をします。

しかし、その「行動」に寄っては命に関わることがあるかもしれません。
でも「任務を達成する」ためには各隊員は「戦力」でなければならず、死んではいけません。
「死にたい」「死なせたくない」という本人やご家族の思いだけでなく、「任務」のためにも死んじゃいけないんです。
死んだら任務が達成できませんから。

私は、予備自衛官補の訓練初日に、大隊長から
「人の命は地球より重いといわれるが、我々自衛官には命よりも重いものがある。それは国民を守るという使命感だ」
と訓示を受けました。

自衛官は、自分の命よりも重い「国民を守るという使命感」を持っています。
でも、だからといってほいほい死にに行くわけではありません。
自衛隊は、「任務」のために行動をしている……というただそれだけなんです。

……と、「任務」を考えると、よく分からない自衛隊のことがちょっとシンプルに分かってきませんか?

もちろん、「任務」は自衛隊だけにあるわけではありません。
警察の任務、消防の任務、海上保安庁の任務……これらの組織も同じです。

学校の先生にも「任務」があります。
お店の店員さんにも「任務」があります。
サラリーマンにもそれぞれの「任務」があります。
子育て中のお母さんにも「任務」があります。

自分の「任務」はなんなのか。
自分はなにをすべき立場で、そのために今日は何を「任務」とすればいいのか。
「任務」のためにどう行動すればいいのか。
……こうやって考えると、日々のあれやこれやの答えがちょっとシンプルに見えてきませんか?

私は、自衛隊で「任務」というものを学んでから、いろんなことをとてもシンプルに考えられるようになりました。

あるお仕事を受けるか受けないか、ということでも「私の任務はなにか」を考えればとてもシンプルに答えは出ます。
「お昼ごはん何食べよう」というような些細すぎることでも、「昼食に与えられた任務」を考えればとてもシンプルに答えは出ます。
「とりあえず空腹を満たす」という任務なら手近なもんでも食べればいいし、「幸福感を得る」という任務ならちょっとお金や時間を掛けても美味しいものを食べればいいし、「筋肉増強」ならササミでもゆがいとけば……いやササミ食っときゃ筋肉付くワケではありませんが、まあこんな感じで「任務」を考えれば日々すっすと動くことができます。

「自分の任務」とはなにか。
「今日の任務」はなにか。
明日は、明後日は、今週は、今月は、今年は……。

お風呂につかりながらでも、ぜひちょいと考えてみてください。


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プロフィール

okadamari

Author:okadamari

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岡田真理・著
(文藝春秋社)


よくわかる自衛隊 (楽しい調べ学習シリーズ)



志方俊之・監修
岡田真理・文
(PHP研究所)



―岡田真理―
フリーライター。昭和52年生まれ、福岡県香春町出身。同志社大学工学部中退。平成17年、陸上自衛隊予備自衛官補(一般)に志願。50日間の教育訓練を経て、平成19年、予備自衛官に任官。現在も任用継続中。全国の陸海空自衛隊各部隊を取材し、「女子高生にも分かる国防」をモットーに執筆活動を行う。

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