■予備自衛官雇用による法人税控除案

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■予備自衛官雇用による法人税控除案

11月17日、こんなニュースが出ました。

予備自衛官雇用で法人税控除案 自民党部会

 自民党の国防部会は17日、有事の際などに一時的に自衛官として活動する予備自衛官などの雇用を増やした企業に対し、法人税を控除する案を了承した。

 「予備自衛官」と「即応予備自衛官」は普段は他の職業に就きながら、有事の際などには、自衛官として活動するもの。しかし、1年間に予備自衛官には5日、即応予備自衛官には30日の訓練義務があり、仕事との両立が難しいことから、2005年の4万1744人から去年は3万7271人に減っている。

 こうしたことから防衛省は、企業が現在雇用している予備自衛官を2人以上、かつ10%以上増やした企業に、予備自衛官1人あたり40万円の法人税控除を行う税制改正の要望案を提示し、部会で了承された。今後、与党の税制協議会で議論される。

http://www.news24.jp/articles/2015/11/17/04315124.html

―日本テレビ系(NNN) 11月17日(火)23時55分配信



えー、初めに言っておきます。
このニュースが配信されると、やはりというかなんというか「安保法制ガー」「安倍ガー」というご意見がネット上で見られましたが、そしてこの法人税控除案に対して「間接的経済的徴兵制だ!」なんてご意見も目にしましたが(「間接的経済的徴兵制」ってなんなんだよ意味がサッパリ分かんねぇよ……)、でもこの案、もう4年くらい前から国会で意見が出てましたからね。

私の知る限りでは、2012年2月12日(民主党政権時)の衆議院予算委員会が最初だったように思います。
しっかりかっちり調べてないので、もっと前から出てたかもしれませんが。

「予備自衛官を雇用する企業には、なんらかの措置を講じるべきではないか」。
この意見は、東日本大震災をきっかけとするところが大きいのではないかと思います。
おそらく震災以前にも同様の意見はあったかと思うのですが、「やっぱなんとかしないと」という機運が高まったのは、東日本大震災が大きなきっかけだったように、私自身感じています。

予備自衛官は、普段はサラリーマンや学生などとして生活をしつつ、いざ災害だ有事だとなったときに自衛官に変身する人たちです。

予備自衛官は、
・自衛隊を退職した人(選考アリ)
・自衛隊経験のない人からの公募(試験・訓練アリ)
から任用されますが、もちろんどちらも「志願制」です。

私は予備自衛官に任官してもうすぐ丸9年になりますが、「自衛隊経験のない人からの公募」組です。
自分で志願して、試験を受けて合格して採用されて訓練を受けて、予備自衛官になりました。

予備自衛官に任官して4年が過ぎた頃、2011年3月11日。
東日本大震災が発生しました。

すぐに自衛隊は災害派遣を開始しましたが、翌12日の早朝、私にも予備自衛官の所属部隊から電話がありました。
私自身や家族の安否確認、そして「もし予備自衛官の災害招集が掛かった場合、応じられますか?」という問い合わせの電話でした。
そして、「招集があればいつでも行きます」と答えました。

私のお仕事はフリーライターです。
フリーで個人事業主なので、自分の仕事はすべて自分で管理できますし、急ななにかがあっても誰にもホウ・レン・ソウなく自分の行動は自分ひとりで判断することができます。
ので、電話を受けたその場で「えーっと、当面の仕事の予定は……???」と考え、そして「よし、なんとかなるな」と判断し、「招集があればいつでも行きます」と答えました。

でも、予備自衛官の大半である、企業に勤めている人はそうはいきません。
招集に応じ、災害派遣に行くには、会社を休まなければなりません。
会社を休むのに、上司への相談もなしに「じゃあこの日からこの日まで休暇!」と自分で勝手に即決できる人はそうそういないと思います。
「かくかくしかじか、災害招集のために休暇をもらえませんか?」と会社に相談して、そして「いいよ」と言ってもらえなければ休暇は取れませんし、休暇が取れなければ招集に応じることはできません。

そしてあの当時、各企業で予備自衛官が「災害招集に応じるために休暇を取得する」ことは、とても困難でした。

まず、「予備自衛官」というものが理解をされていません。
理解をされてない以前に、「予備自衛官?なにそれ?」という人がほとんどです。
(東日本大震災で予備自衛官が招集されたことにより、「予備自衛官」という名前は少しは知られるようになりましたが、当時は「なにそれ?」の人がほとんどでした)

予備自衛官というものが理解をされてない以上、「招集のための休暇」を上司や同僚に受け入れてもらうことはとても困難です。

理解をされていない上に、大災害という非常時。
みなさん、当時を思い出してもらえればお分かりかと思いますが、あの当時は被災地以外でもどの企業もイレギュラーの連続で大変な忙しさでした。
物流、通信、電力などなど、どの企業もたくさんの不安を抱えながら、限られた従業員で仕事をやりくりしていました。

そんなときに、一従業員である予備自衛官が「休暇ください」。
そこで「どうぞどうぞ」と大手を振って言える会社……なかなかないですよね。

もちろん、「国の大変なときなんだから、ぜひ招集に応じなさい。会社のことは気にするな。がんばって行って来い!」という素晴らしい企業もあったそうです。
でも、すべての企業がそうやれるかというと……難しいですよね。

災害も、有事も、起こってしまうと日本中が大変な状況になります。
どの企業も大変なことになります。
そんな中で、普段からお給料を払って福利厚生の面倒も見てる従業員をポンと手放せる企業……どれだけあるでしょうか。

予備自衛官が招集に応じる困難さ。
これは、災害や有事のときだけではありません。

予備自衛官は毎年5~20日間の訓練を受けていますが、この訓練招集のための休暇を取ることですら、「上司や同僚にあまりいい顔をされていない」という予備自衛官がまだまだたくさんいます。
会社の理解が得られなくて訓練招集に応じられず、泣く泣く予備自衛官を辞めてしまった人も少なくありません。

学生時代に合格して採用されて訓練受けて、予備自衛官に任官した後、就職したら会社の都合で辞めざるを得なくなった……なんて人もたくさんいます。

せっかくの人材がもったいないなぁ……と思います。
(そして辞めざるを得なくなった仲間の心情を思うと、本当に心が痛みます)

上記の記事には「予備自衛官が減少している」旨が書かれていますが、せっかく志願して任官しても、こういった理由で辞めざるを得ない人がたくさんいるんです。
実際、志願者はたくさんいます。
年に寄って倍率は変わりますが、なかなかの狭き門で「よし、志願しよう」と試験を受けてもなかなか合格、採用に至りません。
合格、採用を目指して年齢制限ギリギリまで毎年試験を受けている人も結構います。

ざっくり考えれば、「志願者がたくさんいるんだったら、採用の数を増やせばいいじゃん。そしたら辞める人が多くても予備自衛官の数はたくさん確保できるんじゃない?」となるんですが、防衛予算にも限りがあります。
採用した人を予備自衛官として育成するまでに訓練をする場所、日程にも限りがあります。
私も読者さんから「試験を受けたけど不合格でした」というメッセージを頂くことが多々あり、読者さん個人個人のことを思えば「もっとたくさん採用してくれたらなぁ~」と思うんですが、予備自衛官が防衛予算を使って自衛隊という組織で運用されている以上、採用者をドカンと増やすこともできません。

……と、
「東日本大震災時に予備自衛官の招集が決まったとき、どんなことが起こってたか」
「予備自衛官が訓練招集に応じるために、どんなトラブルが起こってるか」
あたりは、拙著「いざ志願!おひとりさま自衛隊」に詳しく書いてますので、もし興味がありましたらご一読ください。
ここに本の原稿をまるまるコピペしたいくらいなんですが(そっちの方が私もラクですし)、でもそれはさすがにいろんなところから怒られますのですみません、立ち読みでも図書館でも結構ですので(とか著者が書くとまたあっちこっちから怒られそうですが)、もし興味がありましたらご一読ください。
あ、東日本大震災時の話は文庫版のあとがきで書いてますので、単行本じゃなくて文庫本でどうぞ。

災害はいつやってくるか分かりません。
有事も……そんなことは絶対に起こって欲しくありませんが、万が一の備えは欠かせません。

そのために、自衛官のリザーブ要員である予備自衛官は、常に「使える」状態でなければなりません。
企業が、予備自衛官である従業員の「招集のための休暇」を認めやすくなる状況を作らなくてはなりません。

もちろん、第一は「予備自衛官そのものが国民に広く深く理解される」ことだと思います。
予備自衛官の理解度を上げるために、防衛省・自衛隊も広報活動に力を入れてますし、私も一予備自衛官として、微力どころじゃない微力ですがいろんなメディアなどに積極的に出るようにして、ひとりでも多くの人に「予備自衛官」という言葉をまず知ってもらえるよう努めています。

しかし、予備自衛官という制度が国民に理解をされても、それだけでは企業が「よし、招集あったらいつでも行って来い!」とはなりません。

「国の大変なときなんだから、企業は予備自衛官である従業員に招集のための休暇を与えるべきだ」
「国防意識があれば休暇を出せるはずだ」
「愛国心があれば」
という意見もありますが、残念ながら国防意識や愛国心だけでは食って行けません。

企業だって、たくさんの従業員を抱えています。
たくさんの従業員の家族の生活も抱えています。
ちゃんと利益を上げないと企業が成り立ちませんし、「国防のために」「国のために」と業績無視で運営してたら企業も従業員もその家族も大変なことになってしまいます。

そこで、上記の「予備自衛官を雇用している企業に対する法人税控除案」。

私には、この案が「予備自衛官が会社を休んで招集に応じられるようになる」ための「最良のもの」かどうかは分かりません。
でも招集休暇を取得しやすくするために、「お金を稼いで利益を出す」ことが不可欠な企業への措置として、「お金」で解決することはひとつの有効な策だと思います。

「災害が発生して、従業員の予備自衛官が招集されることになった。その穴を埋めるために臨時で人を雇用しよう」
これは、「お金」で解決できます。
(どんな人を雇用するか、そんな即戦力な人材はどこで見つけるのかなど、お金「だけ」では解決できないこともありますが)

「予備自衛官の従業員が、訓練で招集される。その間、穴を埋めるために同僚たちに大きな負担がかかる。だから、がんばってくれる同僚たちには特別な福利厚生をしよう」
これは、「お金」で解決できます。
(特別な福利厚生で同僚たちが納得してくれるかどうかは分かりませんが)

このように、「お金」ですべてが解決するとはいえませんが、「お金」はその解決のひとつの策として有効であると私は思います。

もちろん、「お金」以外にももっといい案があればそっちを採用したらいいんじゃない?って思うんですが……私には思いつかないんですよねぇ……もう10年くらいずっと考えてるのに。

あ、2013年に
「CSRとしての予備自衛官雇用」
http://okadamari.blog112.fc2.com/blog-entry-133.html
というご提案はしましたが……。
これだけじゃまだ全然弱いよなぁ。

いつ起こるか分からない災害や有事。
「どうしたらいいのかな~」なんてのんびり言ってられない以上、とりあえずは「お金!!」で当面の解決を図ることは必要なんじゃないかと思っています。
ほんと、これ、今すぐにでも解決しなきゃいけないことですから。

読者のみなさま、
「こういうことをやれば、予備自衛官の招集休暇を企業が認めやすくなるんじゃない?」
って案がもしありましたら、ぜひ教えてください。

そして、従業員に予備自衛官がいる企業のみなさま。
どうか、どうか、予備自衛官の従業員に招集休暇をあげてください。
いや、本当に本当に大変なことだと思うんです。
まだ上記の法人税控除案は成立していないので、予備自衛官である従業員に招集休暇をあげても上司さんや同僚さんにはなーんのメリットもありません。
穴があいてしまって周りに迷惑がかかるというデメリットしかありません。
でも、どうかお願いです。
招集のための休暇を与えてもらえないでしょうか。
そして、もし贅沢を言えるなら、招集休暇に入る予備自衛官に快く「がんばって行ってこい!」のひとことを頂けるととても嬉しいんですが……いや、これはほんとただの贅沢な私の個人的なお願いなんですが。

余談ですが、この「予備自衛官雇用による法人税控除案」。
フリーで個人事業主である私には、一銭の得にもならなさそうです。
まあ、いいんですけどね。
好きでやってますから。


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―岡田真理―
フリーライター。昭和52年生まれ、福岡県香春町出身。同志社大学工学部中退。平成17年、陸上自衛隊予備自衛官補(一般)に志願。50日間の教育訓練を経て、平成19年、予備自衛官に任官。現在も任用継続中。全国の陸海空自衛隊各部隊を取材し、「女子高生にも分かる国防」をモットーに執筆活動を行う。

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